スカパーJSATは2007年11月15日,2007年度中間期(2007年4~9月)の決算に関する記者会見を開いた。

 スカパーJSATは,2007年4月にJSATとスカイパーフェクト・コミュニケーションズが経営統合した際に設立された持ち株会社で,同グループ全体での2007年度中間期における売上高は601億2800万円,営業利益は68億5400万円だった。前年度(2006年度)に対する増減は発表しなかった。前年度は経営統合前なので,グループ全体の業績を直接比較できる数値がないためである。

 全体では比較できないものの,現在スカパーJSATの子会社となっている,JSATとスカイパーフェクト・コミュニケーションズの9月中間期の成績(2006年度と2007年度)をそれぞれ比較することは可能である(表1)。売上高は,JSAT,スカイパーフェクト・コミュニケーションズ共に前年同期並みだったが,衛星通信を事業とするJSATの営業利益と経常利益は共に25%ほど減少した。

表1:JSATとスカイパーフェクト・コミュニケーションズは,2007年4月に経営統合しているため,経営統合前と経営統合後の比較になる。
表1:JSATとスカイパーフェクト・コミュニケーションズは,2007年4月に経営統合しているため,経営統合前と経営統合後の比較になる。 (画像のクリックで拡大)

 スカパーJSATによると,これは2006年の5月と8月にそれぞれ1機ずつ購入した通信衛星の減価償却費によるものだという。一方,スカイパーフェクト・コミュニケーションズの営業利益と経常利益はそれぞれ同87%増,70%増となった。これは,新規の個人契約数に占める「e2 by スカパー!」(110度CSデジタル放送サービス)の割合が高まっていることによるという。

販促費の発生しにくい「e2 by スカパー!」

 e2 by スカパー!は,124/128度CS放送「スカイパーフェクTV!」と異なり,受信機やアンテナを新たに購入しなくても新規に加入できるケースが増えている。市販されているBSデジタル用のアンテナのほとんどが110度CSの受信にも対応しているほか,現在発売されているデジタル・テレビの多くは地上デジタル,BSデジタル,110度CSのすべてに対応した受信機能を備えているからである。専用の受信機を新たに購入する必要がないので,わざわざ代理店を通さなくてもサービスに加入でき,販売促進費が発生しない場合が増えたという。

新規個人契約者数でスカイパーフェクTV!抜く

 e2 by スカパー!は,2002年7月に「スカパー!110」の名称でサービスを開始し,2007年2月に現在の名称に変更したもの。2007年度第2四半期(2007年7~9月)には新規個人契約数が5万3638件となり,初めて四半期ベースでスカイパーフェクTV!(同4万8913件)を上回った(図1)。スカパーJSAT 業務管理部門 広報IR部長の新本朋斉氏によると,e2 by スカパー!の契約者数が伸びている理由は,加入がしやすくなったということ以外にもあるという。

図1:新規個人契約数の推移
図1:新規個人契約数の推移 (画像のクリックで拡大)

 まず,e2 by スカパー!では4つのHDTV放送を見ることができるのに対して,スカイパーフェクTV!では現在HDTV放送を行っていない。さらに,スカイパーフェクTV!が競馬やアダルトといった288もの「ニッチな」(同社)専門チャンネルを持ち「コンテンツ敏感層」を対象にしたものであるのに対し,e2 by スカパー!は家族で楽しむことができるような70チャンネルに絞り,映画やアニメ,プロ野球といった,より一般的な層をターゲットにしていることも理由の一つだという。

 地上アナログ・テレビ放送ではプロ野球の巨人戦の視聴率が以前より低迷している。しかし新本氏によると,1つのチームだけに人気が集中するよりも分散したほうが,スカパーJSATの事業にとっては好ましいという。同社は,日本プロ野球の全試合を放送しているからである。