AR6002の寸法は7mm角
AR6002の寸法は7mm角
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 米Atheros Communications,Inc.は,消費電力を低減した無線LAN用ICを開発,一部のメーカーに向けてサンプル出荷を開始した(発表資料)。

 待機時の消費電力が60μWと,同社従来品の300μWに比較して1/5に低減した。動作時も低い。データ受信時では従来の1/3以下となる140mW,データ送信時は同1/2以下の300mWという。「携帯電話機やポータブル・メディア・プレーヤなど,これまで待機時消費電力を理由に無線LANチップを搭載していなかった機器でも,適用を狙える。これまでの無線LANが対象としなかった,新しい市場セグメントに向けられる」(アセロス・コミュニケーションズ 代表取締役社長の大澤智喜氏)。

プロセスと設計の両面で工夫

 チップの名称は「AR6002」。Atheros社が携帯機器に向けて開発する無線LANチップ「ROCm」シリーズの第2世代品に相当する。MAC制御/ベースバンド処理機能やRFトランシーバ回路のほか,LNAとパワー・アンプ(送信出力は+10dBm)まで内蔵する。さらに今回は初めて,アンテナ・スイッチも集積した。高集積ながら,チップ寸法は7mm角と従来並みにとどめた。

 消費電力を低減するため,プロセス面と設計面の両方で改良に取り組んだ。まずプロセスでは,従来の180nmのCMOSプロセスから,130nmのCMOSプロセスに変更し集積度を高めた。これにより動作電圧は,デジタル部が1.2Vでアナログ部が1.8Vで駆動できる。従来はデジタル部が1.8V,アナログ部が3.0V駆動だった。アナログ部の低電圧化は,性能劣化につながりやすい。しかしAtheros社によれば,最小受信感度などの特性は劣化していないという。

 もう一つの設計面での工夫では,送受信回路のアーキテクチャにダイレクト・コンバージョン型を採用している。これによりフィルタなどの個数を削減しているという。また内部の回路に供給するクロックを緻密に制御することで,待機時の消費電力を低減できたとしている。

 このほかBluetoothと同時利用する際に,相互干渉を防ぐ手法を複数盛り込んだ。無線LAN用チップとBluetooth用チップをチップ間インタフェースで接続し,相互に伝送タイミングを調整する手法を採用した。さらに無線LANネットワーク内のデータ・トラヒックを調整するためのAtheros社独自の手法も組み込んでいるという。

 2.4GHz帯の「11g」対応のチップと,5GHz帯の「11a」にも対応できるチップを用意した。量産出荷は2008年第1四半期の予定。

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