デンソーは,走行中のカメラ映像で標識を識別する技術を第40回東京モーターショー(一般公開日:2007年10月27日~11月11日)で披露した(図1)。特徴は,メモリ内に格納する参照用の標識画像を一つのパターンだけにしたことである。従来は,一つの標識画像に対して,大きさが異なったり,傾きを考慮したりした複数の画像をあらかじめメモリ内に格納していた。これにより,一致する画像を探索する作業が減る。
この技術は,カメラ映像の濃淡から,標識と一致しそうな特徴的な点である「特異点」を見つけ,特異点とメモリ内に格納してある標識画像とのマッチングを行うことで,標識の種類を認識する技術である。今回のデモンストレーションではカラー映像を披露していたが,実際の画像処理でモノクロ映像を使う。
今回の技術による標識の認識率は90%程度という。「認識できない標識については,アルゴリズムの問題というより標識の色が薄くなっていたり太陽光が強すぎたりするという環境的な要因がほとんど」(同社 説明員)という。実用化にはまだ時間がかかり,「5~10年先」(同氏)と語った。実用化する際は「まずは警告用のランプを点灯したり音を発生したりして運転者に注意を喚起すること」(同氏)から取り組む予定である。標識の種類に応じてブレーキ制御を行うことについては「認識率をさらに上げないと難しい」(同氏)との考えを示した。
さらに現状の課題として,画像処理用のプロセサの性能を挙げる。「基本的なアルゴリズムは,特異点を見つけてはメモリ内の標識画像とマッチングする作業を繰り返すという単純なもの。例えば,IBM社とソニー・グループ,東芝の3社で開発したマイクロプロセサである『Cell』くらいの処理性能が欲しい」(同氏)という。今回のデモでは,米Intel社製のマイクロプロセサ「Pentium D」(3GHz)を使っている。
このほか同社は,多数の人が写った画像の一部を切り取った「ピース」をカメラの下に置くと,ピースと一致する画像をディスプレイの中から即座に探し出して表示するデモも披露した(図2)。