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 「2012年には,フラットパネル・ディスプレイ(FPD)市場を現在の50%増の1500億米ドル市場に成長させる」。2007年10月24日に開催された「FPD International 2007」の基調講演で韓国Samsung Electronics Co., Ltd.のPresident & CEO, LCD BusinessのSang-Wan Lee氏は,「2010年以降のFPD産業は第2ラウンドであり,『Value Creation』をテーマに市場拡大を図る」と述べ,「夢を実現していきたい」と語った。

デジタル・サイネージへの本格参入で大型FPD市場を1ケタ増やす

 これまでの予測では,テレビ市場が2010年に伸びが止まるとされているとする。このためLee氏は,「新たな成長エンジン」となる五つの期待される製品を挙げた。

 第1が「デジタル・サイネージ」である。屋外の広告ボードの需要にFPDで応えることによって,「第4の波になる」とする。屋内で使う用途だけでは,現在の130万台の需要が2010年に310万台になるに過ぎないが,屋外の広告ボード需要を取り込むことで数千万台を超える市場になるとする。このためには,現在の700cd/m2を2000 cd/m2へ引き上げる必要があると述べた。さらに,表示領域の周りのベゼル(額縁)部の幅を現在の30mmから4mmまで狭めることで,マルチスクリーン市場に参入できるようになるとする。

 第2が「家庭用アドバンスド・テレビ」である。80型以上の大画面,フルHD(high definition)の4倍の画素数,100万:1のいわゆる「メガコントラスト」,および革新的デザインを併せ持つ“未来テレビ”であるとする。同氏は一例として,高精細を生かした「デジタル・ギャラリー」を挙げた。アート・ウォール(壁)として使えるが,そのためにNTSC比110%の色再現範囲が必要になるとする。

 第3はオフィスや学校で使える「eボード」である。100型以上の大型ディスプレイによって,教育やプレゼンテーションにおける情報の質と量を拡大する。パネルに情報を直接書き込めるように,イメージ・センサー内蔵のタッチ機能を備えるとする。

 第4は「プレミアムITディスプレイ」とする。例えば,ハンドバックのように持ち歩けて,いつでも映像が楽しめる軽量なディスプレイである。LEDバックライトを搭載する。また,パソコン(PC)モニターもセカンド・テレビとして使えるよう,24型以上でフルHDが基本になるとする。

 第5は「パーソナル・デジタル・ボード」である。現在の携帯電話機のディスプレイの便利さを生かしつつ,持ち歩いて映像を楽しめる機器である。折り畳んで持ち歩け,開いて大きく使うために,狭いベゼル幅が必要とする。

技術イノベーションは成長の原動力

 大型のデジタル・サイネージ市場では,100型サイズとのこれまでの4倍の精細度のパネルを普通に実現する技術が必要で,「技術イノベーションは,これまでの第1ラウンドと同様,成長の原動力になる」とした。しかし,これまでの延長ではなく,材料,プロセス,設備のイノベーションによって初めて達成できるとする。

 このためには,電子移動度をこれまでの4倍の2cm2/V・s,RC遅延を1/4の1μsとすること,100℃の低温プロセスでプラスチック基板にも対応すること,インクジェット技術の生産性を向上すること,これまで以上に高速な液晶モードを実現すること,厚さ10mm以下のスリム化を図ることなどが必要とした。特に,製造プロセスの革新によって,現在1000万米ドルはかかるとする第10世代ガラス基板対応マスクのコストを8世代基板向けマスク並みの600万米ドルにキープする必要があるとし,マスクレスのデジタル露光機などを期待するとした。

60型,70型で最適なガラス基板サイズを検討中

 同社の戦略として,(1)平均パネル単価の30%向上,(2)ハイビジョン視聴に適した16:9のワイド画面のノートPC向けパネルの開発,(3)情報表示パネルを40型から82型までラインアップし,2008年に輝度1500cd/m2の狭額縁パネルで屋外広告パネル市場を開拓,(4)スマートフォン向けに3型で精細度200ppi(pixel per inch)アドバンスド・パネルでハイエンド市場を開拓,(5)2010年までに有機ELパネルの生産開始を目標とし,14型パネルを開発,を挙げた。特に平均パネル単価を向上するため,52型に最適な第9世代ではなく,60型の8面取りと70型の6面取りに最適な「3000±αmm×3200±αmm」のガラス基板寸法を検討中とした。

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