筆者はここ数年,秋葉原に行ったことがない。久し振りの秋葉原は,読者の多くも知っているように,駅が非常に整備されて,きれいになっている。そして,日本の文化とも言われる『メイドさん』が,平日にも関わらずビラを配っている。結構,楽しかったりする。

 目的地は,“パーツとツールのスーパーマーケット”といった看板を掲げる千代田区外神田のお店。この付近には,技術者ならば誰でも知っているという超有名店もあるらしい。「学生から有名企業のトップまではんだごてを握る技術者ならば知らない人はいない」(元技術者の同僚)というほど技術者には魅力的な場所らしい。ただし,今回は,「店内の陳列の仕方が初心者にも分かりやすい」(元技術者の同僚)ということで,超有名店ではないほうの店で買い物をすることにした。

パーツ選びは難しい

 このお店は大通りからは少し入った位置に店舗を構えている。店の前にはかごに入った部品が並べられていおり,専門店といった雰囲気がありありだ。素人には敷居の高さが感じられる。

 足を踏み入れると,売り場は1階,2階,地下1階の三つのフロアに分かれている。大きく分けると2階,地下1階に細かい部品が,1階には工具が陳列されている。まずは,細かい部品をそろえるために2階に上がると,レターケースやトレーが所狭しと並んでいる。この中から目的とするものを探すのだ(図3)。

図3●目的とする部品を入手するのに悪戦苦闘(撮影協力:千石電商)

 もちろん,トランジスタごと,ダイオードごとに陳列位置はまとまってはいるものの,その種類が膨大にある。ダイオードを自分で選ぶことを試みるも,ダイオードでは,複数の候補が見つかってしまう。結局は元技術者の同僚の指示のもとに,ケースから取り出す。専用のトレーに入れるところが,何となく電子部品を買いに来た気になる。

 タクトスイッチや圧電ブザー,可変抵抗は,ダイオードほど種類が多くない。そこで,写真と見比べて,最も近いものを購入。おそらくこれでいけるはず。

 リード線に関しては,色も太さもいろいろある。元技術者の同僚によれば細ければ柔軟性があるので引き回しがしやすいが,一方ではんだが付けにくくなるし,ワイヤの被覆線もはがしにくくなってくる。ここはパッケージに「仕上がり外形が1.36mmと細く機器配線に最適です」と書かれた,ワイヤ径が0.6mmのものを選択する。

 続いて工具。まずははんだごてを物色していると,横から元技術者の同僚が手を伸ばし,「はんだごてはこれ」と有無も言わさずにかごの中に入れる。彼が選んだのは「goot」ブランドの製品。使いやすさで定評があり,彼のかつての同僚の多くも愛用していたという。こて先の形状なのか,はたまたグリップの握りやすさなのか理由は分からないが,価格も手ごろなために素直に指示に従う。

 続いて,ニッパーやラジオペンチなどだが,いずれも複数のブランド品があり,どれを選んでよいのかが分からない。慣れない買い物で既に疲れていたので,ここはブランドを統一することを優先,工具はすべてgootブランドのものを購入することとした。

図4●買い物を終えて店先で記念撮影(撮影協力:千石電商)

 最後にユニバーサル基板を選択。基板の価格が結構高く,選んだものが1枚2000円以上。当初は,失敗したときのために,基板を2枚購入することも考えたが断念せざるを得なかった。

 これにて買い物は終了(図4)。全部で価格は1万円ちょっと。工具をすべてそろえたので,立派な工作セットができあがったことになる(図5)。次は実際の工作となるわけだが,はんだを使ったのはおそらく中学校の技術の時間が最後か。「工作の際にはまた声を掛けますのでお願いします」と,帰りの電車の中で,元技術者の同僚に念を押すことは忘れなかった。


図5●買い物で入手したもの