英国は2007年10月17日,一部地域で地上のアナログ波によるテレビ向け放送を停止し,地上デジタル放送への完全切り替えを開始した。英国は2008年から,都市ごとにデジタル放送への完全移行を進め,2012年末までに地上アナログ放送を完全に停波する計画。今回はそれに向けた実験的意味あいが強い。

 今回停波を始めたのは,イングランド北西部にあるCopelandという地域。Whitehavenという,人口約2万5000人の小さな港町が中心になっている。10月17日は英国放送協会(BBC)のチャンネル「BBC Two」が停波し,次いで2007年11月14日に残りの約19チャンネルが停波する。

 アナログ放送に代わるテレビ番組の配信形態は,大きく分けて(1)一部無料の地上デジタル放送,(2)一部無料の衛星放送,(3)有料のケーブルテレビ,(4)DSL回線経由の有料放送,の4種類である。(1)の場合,視聴料は40チャンネル程度まで無料だが,デジタル放送を受けて従来のアナログ放送向けテレビに信号を変換するセットトップ・ボックス(STB)は30英ポンド(約7000円)以上,デジタル放送対応のテレビが100英ポンド以上する。

停波2カ月前にデジタルSTBに需要殺到

 英国でのデジタル放送への切り替え作業を統括する非営利団体である英Digital UK Ltd.によれば,2007年6月末の時点でCopelandの住民の76%の世帯が既にデジタルの衛星テレビを視聴していたという。しかし,家に設置しているすべてのテレビをデジタル放送に対応させている世帯は全体の42%に過ぎなかった。一部報道によれば,Whitehavenでは2007年8月になってSTBの駆け込み需要があり,普段の15倍の売り上げを記録した店もあったという。

 デジタル放送への切り替えに伴うアナログ放送の停波は既にオランダが完了させた。スウェーデンも2008年に完了する。一方で,当初2010年末の停波を予定していた韓国は,2007年4月に停波を2年間延期し,2012年末にすることを発表している。