LEGO Universeの様子
LEGO Universeの様子
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 「2000年代に入って,10年間の損失が合計で15億米ドルに達した日がきた。これが,我々はどこで道に迷ったのかを研究する決断につながった」(デンマークLEGO Systems A/S,Director Business DevelopmentのMark Hansen氏)。民族誌学者(ethnographer)の研究を企業がどのように生かしていくのかを探るイベント「Ethnographic Praxis in Industry Conference(EPIC2007)」(WWWサイト)が,2007年10月3日~6日に米国コロラド州で開かれた。ここ数年,民族誌学者による研究に力を入れてきた米Intel Corp.,米Microsoft Corp.,米IBM Corp.などが後援しているイベントである。今回の発表の中で,特に話題を呼んだのがLEGO社の発表だった。

 LEGO社では,2003年にJrgen Vig Knutstorp氏が新たにCEOに就任した。同氏は有名な玩具メーカーであるLEGO社の先行きを決めるために,「なぜ子供たちは遊ぶのか」という根本的な質問に答える研究を進めることを決め,コンサルティングの企業デンマークReD Associates社に委託した。これを受けてReD社は,民族誌学者による全世界における子供たちの遊び方の研究に着手した。研究を始めた当初,LEGO社内の常識は,子供たちの遊び方は基本的に昔とは変わっているというものだった。玩具の将来は,時間をかけて組み立てたりしなくてもすぐに楽しめるPlaystationのような技術に依存し,LEGO社のブロックのような従来製品の価値はなくなったとみていた。

 しかし,ReD社の民族誌学者の研究によると,遊び方ではなく子供が遊べる環境が変わったことが分かった。「特に,米国では親の心配により子供が親から離れて自由に遊べる場所が減った」(ReD社のChristian Madsbjerg氏)。Playstationのようなゲーム機で遊べる時間は親から制限されているので,必ずしもLEGO社の製品の敵ではないと分かったという。さらに,比較的時間がかかる複雑な遊びにも子供たちはまだ興味があると結論付け,LEGO社製品にはまだチャンスがあると判断した。この研究に基づき,同社は製品群の約70%に変更を加え,コストの削減を進めた結果,利益を出せるようになった。この民族誌学者の研究は,LEGO社が2008年第4四半期に開始する予定のオンライン・ゲーム「LEGO Universe」(発表資料)にも影響したという。