図2●セミナーに利用した教材,パソコンとCPUボード
図2●セミナーに利用した教材,パソコンとCPUボード (画像のクリックで拡大)

 今回のセミナーの受講者は総勢14人。顔ぶれは想像通りに若い。というのも新入社員,もしくは入社数年の若い技術者が研修代わりに受講するケースが多い,と事前に聞いていたからだ。おそらく,40歳代に突入しているのは,筆者だけだと思われる。比較的広めの机の上に教材とともに置かれているのは,ノートパソコンに加えてLEDやらモータやら電子部品やらが搭載された実習用のCPUボード(図2)。最終日には,このLEDやモータが動く何かが作れることに期待する。

歴史は一応理解

 講義は初め,「I章 マイクロコンピュータの歴史」からスタート。電子機器は,真空管からトランジスタ,ICと新技術が登場するごとに進化していく。ICは革新的だったものの,新しい機器を開発するたびに,その回路設計に多くの時間を費やさなくてはならないことに辟易とした日本の電卓メーカー。「回路を変更しないで機能を変更できないか?」。この要望に対して,マイコンという形で答えたのが米Intel社だった。1970年のことで,日本の考えを米国が実現したわけだ。おそらく,電子回路技術者にとっては当たり前の話でも,筆者にとっては初めてなので,おもしろく聞く。

図3●マイコンの三つのブロックとそれをつなぐ信号線
図3●マイコンの三つのブロックとそれをつなぐ信号線 (画像のクリックで拡大)

 続けての講義は,「II章 マイクロコンピュータとは」。ここで学んだ重要なことは,まずマイコンのハードウエアは演算を処理するCPU,情報を記憶するメモリ,外部の機器と情報をやり取りするI/Oの三つのブロックから構成されていること,そしてこの三つのブロックは,アドレス・バス,データ・バス,コントロール・バスの3種類の信号線で結ばれていることだ(図3)。アドレス・バスで場所を指定し,データ・バスで情報を伝達し,そしてコントロール・バスで読み出すのか書き出すのかの動作指令を行う。

 プログラムに関しての説明だが,セミナーではプログラムにアセンブリ言語を使うという。CPUが理解できるのは,ただのデータ。そのCPUに,なんとか人間でも分かりやすいような表現で指令を与えるのがアセンブラ言語。CPUに対する一つの命令は「ニモニック」という言葉で表記する。CPUが理解できる機械語に近い分,CPUにより記述方法が違うらしい。

 配られた教材には,「III章 マイクロコンピュータの基礎知識」と続くが,ここはポイントを確認する程度。この章で書かれているのは,デジタル信号や2進数,16進数の扱い方,CPUやメモリを構成するAND回路,OR回路などの基本ゲート回路の考え方,記憶回路であるフリップ・フロップ回路の考え方など。ここは直接プログラムの作成には関係ないものの,各自自習しておくようにとの指示が出る。

 「IV章 メモリとI/O」では,メモリとI/Oに関してのさらに詳細な説明に入る。ROMやRAMといったメモリの種類,多くの記憶回路から構成されるメモリの内部構成,I/Oと外部機器との接続の注意点などを学ぶ。

 ここまでの座学は,比較的すんなりと飲み込める。もちろん,プログラムを作成しているわけでもないので,悩むこともない。実はややこしくなってくるのはここからだった。(次のページへ