居眠り運転防止機能を備えた自動車用の座席の技術を紹介し「うちの大学の教室に50個ほど置かせてくださいと開発元にお願いしてみたけど断られました」。軽妙な語り口で会場を和ませながら講演する新氏

 「シリコンにこだわってもらっては困ります」---。電気通信大学システム工学科教授の新誠一氏は,2007年8月31日に「カーエレクトロニクスの現状と将来の動向」と題する講演を行った。電子情報技術産業協会(JEITA)が主催するセミナー「電子機器及び電子デバイス関連の動向」に招かれて行った講演である。

 新教授は以前から自動車メーカーの開発をソフトウエア面でサポートしてきている。こうした実績を背景に,受講者の多くを占める半導体メーカー関係者に対し,今後のカーエレクトロニクス開発に対する自動車メーカーの要望を代弁したかたちである。

 新氏によれば,自動車向け半導体に求められる特性は熱と振動,電磁雑音に対する耐性に尽きるという。「例えばレクサスLS460はマイコンを100個,モータをそれ以上積んで,それらをCAN(controller area network)でつないでいる。当然,車内のあちこちで発熱するし,電磁雑音が発生する。となれば,半導体の耐熱性能も+70℃なんかではもうダメです。電磁干渉も低減しないとダメ。もちろん,悪路を走っても壊れないだけの耐振動性も必要」。

 こうした要件を満たすために,Si(シリコン)以外の材料を用いた半導体の開発が求められると同氏は説く。「いつまでもSiにこだわられると非常に困ります。SiC(シリコン・カーバイド)やダイヤモンドなどの半導体を積極的に開発してもらいたい。これは自動車内部の電源の高電圧化の流れをみても必要なこと」。

カーエレで「熱い」のは運転者モニタ

 新氏は講演の中で,車載半導体のアプリケーションとして自動車業界が現在,力を入れているものをいくつか紹介した。「モニタリングは,車外を見渡すものについては開発が一段落した感がある。今,ホットなのは運転者のモニタリング」。運転者の顔をカメラで撮影し,まぶたを閉じた状態が続けば冷風で眠気を覚ます居眠り防止システムや,カメラで瞳孔の焦点が確認できなければ自動で減速・停止する飲酒運転防止システムなどの開発が進んでいるという(Tech-On!関連記事)。

 このほか,走行音の分析によって使用しているタイヤの種類を同定し,制御系にそれを伝えて制御の仕方を調節するシステムや,先行車両の走行データから路面の状態を把握し,後続車両に伝えるシステムなどを「ホット」な分野として紹介した。

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