経済産業省は2007年8月30日,韓国Hynix Semiconductor,Inc.のDRAMへの関税問題で,WTO(World Trade Organization:世界貿易機関)に上訴した。

 経産省によれば,Hynix社は韓国政府からの補助金を受けてDRAMを低価格で日本へ輸出してきたという。これに対し,エルピーダとマイクロンジャパンが2004年6月,補助金相殺関税を賦課するよう財務省に申請(Tech-On!関連記事1同2)。2006年1月に補助金相殺関税が賦課された(同3)。同年6月,これを不服としてHynix社がWTOに提訴,WTOはこの問題を検討するパネルを設置した。パネルは2007年7月,日本の補助金相殺関税の一部に問題があるとする裁定を下した。今回の上訴はこれを受けてのもの。

後手にまわった日本政府の対応

 欧州や米国ではHynix製DRAMに対して同様の相殺関税を実施している(Tech-On!関連記事4)。日本の相殺関税だけが違法とされたのはなぜか---。

 米国とEUが2003年に関税賦課の最終決定を下したのに比べ,日本は2006年。「対応が遅れたために,韓国側の対策が施されたことが大きい」(経済産業省 貿易経済協力局 特殊関税等調査室)。Hynix社が韓国政府から間接的に資金援助を受けたのは2001年10月と2002年12月とされる。米国とEUは1度目の援助の時点で始動。このため「韓国側の警戒が強まった。今回のWTOパネルの裁定では,2002年12月の援助について日本側が提出した証拠が不十分とされている。2度目の援助は援助方法がより巧妙になっていて証拠が集めにくかった」(同)という。

11月末までに結論

 上訴を受けてWTOの上級委員会ではパネルの裁定が適切であったかどうかの評価を下す。これはWTOの最終判断となるもので,協定により上級委員会は上訴から90日以内に報告を公表することになっている。パネルの裁定が上級委員会で適切と認められれば,日本は現在27.2%としている補助金相殺関税を引き下げる方向での検討を迫られる。

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