Bluetooth内蔵D-snap「SV-SD950N」外観
Bluetooth内蔵D-snap「SV-SD950N」外観
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 松下電器産業は,SDメモリーカードをメディアとした携帯型デジタル音楽プレーヤー「D-snap」の新製品「SV-SD950N」(SD950Nの発表資料SD950N紹介ページ)と,D-snapのドッキング・ステーションとしても使えるHDD搭載ミニ・コンポ「D-dock」の新製品「SC-SX950」(SX950の発表資料SX950紹介ページ)を発表した。Bluetoothに対応し,無線でつながることにより,携帯電話機やカーナビなどとの連携も含め利用シーンを広げた。SX950は6台までBluetooth機器を使用登録(ペアリング)できる。さらに,別売りのアダプタ「SH-PD9」(SH-PD9の発表資料)を装着すれば米Apple Inc.の携帯型デジタル音楽プレーヤー「iPod」を接続可能だ。「iPodの普及を勘案し,D-snapの競合機と捉えるのではなく,CDなどと同列な一つのメディアと考えている」(同社)。

広がる用途・機能


 SD950Nは,携帯電話機に収納した「着うたフル」などの音楽や受信中のワンセグ放送の音声を,Bluetoothで受信して再生したり,SDメモリーカードに録音したりできる。また,着信があると携帯電話機を取り出さずに通話できる。携帯電話に登録済みの相手先1件のみに限られるが発信も可能。周囲の騒音をカットする「騒音キラー」機能のために使うマイクを流用し,音声を拾う。
 SX950に格納した音楽を無線で受信し再生でき,屋内外であたかも無線ヘッドセットのような使い方ができる。自動車の中では,Bluetooth対応カーナビで,SD950Nの音楽を再生可能。再生・停止などの基本操作は手元のSD950Nで操作できる。
 SD950NとSX950を直接接続すると,再生と充電に加え,SX950の内蔵HDDに録り貯めた音楽をSD950NのSDメモリーカードに最大16倍速で転送できる。

FMラジオ受信部跡地にBluetooth送受信機能を収める


 SD950Nは,前世代機の「SV-SD850」と同じ外形寸法35.0mm×91.3mm×12.3mmで,重さはSD850の約43gから約38gに軽くしている。SD850では搭載していたFMラジオ受信機能を外し,この筐体サイズに収まるようBluetoothのアンテナと送受信回路を開発した。D-snapは,Bluetoothの電波に影響する人体に密着する頻度が高いと想定される。また,Bluetoothの近傍周波数帯は他の無線技術が使用している。電池をはじめ近接する部品の影響を受けることも課題だった。
 アンテナは,形状を変えてシミュレーションを繰り返し,実際に電車に乗ってフィールド・テストも行った結果,チップ型ではなく,プリント基板のグラウンド箔と組み合わせて形成したループ型で,放射特性と感度の要件を満たせたという。見通し通信距離は約10m。この飛距離は,80.4mm×21.0mm×20.6mmのレシーバとパソコンなどのUSBポートにつながる55.5mm×8.8mm×17.6mmトランスミッタで構成したオーディオ用Bluetoothドングル「SH-FX550」と同等という。
 Bluetooth送受信回路はモジュールで調達せず,「シェアが高いメーカー製のLSI」(同社)を採用して自社で設計した。SD850と同じ大きさを保つため,従来品で使用していた0605サイズのコンデンサを0603に変更するなど,0.1mm単位の小型化を図っている。アンテナと内蔵Liイオン電池はある程度離す必要があったため,電池は従来品より小型化した。これにより最長再生時間は従来の約80時間から約60時間になったが,FM受信回路と入れ替えるだけでは基板上の面積が足らなかった一部分を,電池とアンテナとの間に設けた隙間に実装した。

高音域を強化


 SD950NおよびSX950が対応する録音形式はAAC(MPEG-4)/WMA/MP3。SD950Nは,独自のデジタル・アンプ「D.soundエンジン」で,音声データ圧縮時に失われた高音域信号をCDの帯域以上に補完する機能「広帯域リ.マスター」を備える。広帯域リ.マスターでは,遅延が起きないようマイコンで制御しながら,A-D変換回路によるアナログ・データのデジタル化と,ソフトウエアDSPによるリマスタを同時に実行する。これにより,アナログ信号にも対応し,高音域の周波数を16kHz程度から20kHz程度に引き上げた。
 SX950では,HDDやSDメモリーカード内の音楽だけではなく,携帯電話機からBluetooth経由で転送した音楽やiPodから再生する音楽も高音質化処理する機能「マルチソース リ.マスター」を装備している。この他に,LAN経由でパソコン内の音楽を取り込める機能やタイトル情報の自動取得機能(Gracenote),薄型テレビに採用実績のある羽毛化竹パルプ製スピーカーを採用した。竹繊維は断面が円柱状で剛性が高いが細いため,シートに加工すると太い平板状で重なり合う針葉樹繊維製の方が振動板に向くという。これに対し今回使用した竹パルプは,繊維の表面のみ羽毛状にして絡ませ芯を残すことで,竹本来の剛性を生かせたとしている。音の立ち上がりと高音域の伸びに優れるとした。

Bluetooth内蔵D-snapは2万5000円,D-dockは7万5000円


 SD950N,SX950,SH-PD9とも価格はオープンだが,小売価格はそれぞれ2万5000円,7万5000円,5000円の前後になる模様。SH-PD9は当初SX950に同梱する。生産規模は月産8000台を計画している。ミニ・コンポ市場において,HDDに録り,パソコンを介さず携帯型プレーヤーで持ち出すコンセプトの機種は,2008年度に2割程度の構成比を占めると同社では見ている。SD950Nは,月産1万台の見込み。1GバイトのSDメモリーカードを同梱する。いずれも,2007年9月21日一般発売。松下グループの製品を販売するWWWサイト「PanaSense」では,2007年9月12日13時まで,SD950Nの限定モニター販売を受け付けている。

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Bluetooth対応D-dock「SC-SX950」外観(SD950N接続中)
Bluetooth対応D-dock「SC-SX950」外観(SD950N接続中)
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D-dock「SC-SX950」用iPodアダプタ「SH-PD9」外観(D-dock本体上面,D-snapドックの後ろに取り付ける)
D-dock「SC-SX950」用iPodアダプタ「SH-PD9」外観(D-dock本体上面,D-snapドックの後ろに取り付ける)
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SD950N内部の基板を利用したループ型アンテナ(表面から見たところ,アンテナの裏にBluetooth回路がある)
SD950N内部の基板を利用したループ型アンテナ(表面から見たところ,アンテナの裏にBluetooth回路がある)
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SD950N内部のBluetooth実装部(裏面から見たところ,一部は表面にある)
SD950N内部のBluetooth実装部(裏面から見たところ,一部は表面にある)
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iPodからの音源にリマスタを掛けた時の波形変化
iPodからの音源にリマスタを掛けた時の波形変化
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スピーカーに使用した羽毛化竹繊維のSEM写真
スピーカーに使用した羽毛化竹繊維のSEM写真
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