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 シャープは,「MPEG4準拠」をうたうカメラ「インターネットビューカム VN-EZ1」を1999年4月27日に発売する。35 万画素のCCD型固体撮像素子で撮影した動画を,新開発したMPEG4コーデック(符号化/復号化)LSIでデータ圧縮し,フラッシュEEPROM搭載の小型メモリ・カード「SmartMedia」に記録する。32MバイトのSmartMediaを使った場合,「ノーマルモード」(画素数160×120,記録速度64kビット/秒,フレーム速度5~10フレーム/秒)の動画を約1時間記録できる。価格は6万円。

 「パソコン周辺機器として使ってもらいたい」(シャープ 電子ビデオカメラ事業部 第1商品企画部長の茅岡日佐雄氏)というように,インターネットで動画データを利用するユーザにターゲットを絞った。電子メールに動画データを添付したり,WWWのホームページを使って撮影した動画データを再生できるようにしたりといった用途を見込む。「ディジタル・ネットワーク時代の新しいコミュニケーション・ツールに育てたい」(シャープ 副社長の新本孫宏氏)。ただし,ユーザのニーズは未知数である。「すでに見えている市場に向けて発売するというよりも,用途を提案して新しい市場を開拓する」(茅岡氏)という。

 上記のノーマルモードであれば,3分の動画データを2Mバイト以下に抑えられる。同社は,2Mバイト程度のデータ量であれば,現状の通信回線速度でも十分利用できるとみた。動画データの記録フォーマットには,米Microsoft Corp.が提唱するASF(Advanced Streaming Format)形式を採用する。Microsoft社の「Windows Media Player」を使えば,自動的にMPEG4復号化ソフトウエアをダウンロードして動画データを再生できる。Microsoft社のWWW閲覧ソフトウエア「Internet Explorer 5.0」では,「標準でMPEG4復号化ソフトウエアが備えられる予定」(シャープ)という。

MPEG4ビデオのシンプル・プロファイルに準拠

 インターネットビューカムが採用したMPEG4ビデオは,その規格化がほぼ完了しており,間もなくIS(国際標準)となる。今回の製品発表はこれを見込んでのこと。MPEG4ビデオで規定されたプロファイル(ある応用を想定して複数の符号化ツールをまとめたセット)のうち,32kビット/秒~384kビット/秒のシンプル・プロファイルを採用した。シンプル・プロファイルは,双方向予測(Bピクチャ)やオブジェクト符号化などを省いた最も「軽い」プロファイルである。このシンプル・プロファイルを採用したMPEG4ビデオ製品としては,東芝の「MobileMotion」がある(http://www2.toshiba.co.jp/mmotionに関連情報)。このほか松下電器産業は,「MPEG4Objectプレイヤ Version 1.0 日本語版」を開発,インターネット中継の実験などを行なっている(関連記事)。

 インターネットビューカムの記録モードは圧縮率の違いにより5種類ある。
(1)LPモード(音声を含めた符号化データ速度は28.8kビット/秒),
(2)ノーマル・モード(同64kビット/秒),
(3)ファイン・モード(同192kビット/秒),
(4)Sファイン・モード(同384kビット/秒),
(5)1/4 VGAモード(同384kビット/秒)。

 画像寸法は(1)~(4)が160×120画素,(5)が320×240画素。フレーム周波数は(2)のノーマル・モードで最大10数フレーム/秒という。

音声はITU勧告G.726,記録フォーマットはASFを採用

 音声の符号化方式はADPCM方式のITU勧告G.726を採用した。符号化データ速度は10数kビット/秒~32kビット/秒。

 動画と音声を同期多重して記録するフォーマットとしてASFを採用したのは,Windows Media Player がMPEG4ビデオの復号化機能をすでに備えているため。シャープによれば,ASF以外にも,(1)Apple Computer社のQuickTime,(2)RealNetworks社のRealPlayer,(3)MPEG4システムも検討したという。(1) はリアルタイムのストリーミング再生機能が弱く,(2)はLSIに実装することが難しい,(3)はまだ標準仕様が確定していない,といった理由で今回の採用を見送った。MPEG4システムは2000年にまとまるMPEG4 Version2で規定される。ちなみにMPEG4システムの標準化作業においては,Microsoft社がASFを,Apple社がQuickTime をそれぞれ提案し,投票の結果,QuickTimeベースで進めることになったという経緯がある。

 MPEG4ビデオの符号化/復号化処理は,携帯電話機用DSPコアをベースとするカスタムLSIで実現した。+2.5V動作時の消費電力は100mW。動作周波数は75MHz。音声の符号化/復号化もこのカスタムLSIで処理する。