ディーアンドエムホールディングス マランツ ブランド カンパニー(以下,マランツ)は,2007年10月をメドにセパレート型オーディオ用アンプを発売する(発表資料)。価格はコントロール・アンプとパワー・アンプの2台合計で100万円強だが,同社製品としては「中級」の位置付けだ。同社がこのクラスのセパレート型アンプを発売するのは24年ぶりという。


今回発売するアンプ(上がコントロール・アンプ,下はパワー・アンプ)

 ターゲットにしているのは「プリメイン・アンプのユーザーでそろそろセパレート型に替えたいと考えている人や,現在は比較的安価なセパレート型アンプを使っていて,一段上の機種への買い替えを考えている人」(マランツの企画担当者)。同社は2006年にセパレート型アンプの最上位機種を発売しているが「最上位機種は2台合計で150万円弱で筐体も大きいため,なかなか手が出ないオーディオ・ファンもいる」(同)ことを考慮して製品系列の拡充を決めた。2007年9月には同じく中級のSACD(Super Audio CD)プレーヤも発売する計画だ。


今回発売するSACDプレーヤ

 フラッシュ・メモリやハード・ディスク装置を用いた携帯型音楽プレーヤの台頭により,MDやCDといった従来型オーディオ機器の市場は縮小が続いている。マランツはオーディオ市場の動向について「確かにミニコンポなどは,音楽はパソコンで聴けばいいといった考えが広がった影響で需要が低迷しているようだ。しかし,高級機の市場はまた別。拡大はしていないが縮小もしていない。iPodやパソコンの市場がどれだけ広がっても,趣味として本格オーディオを楽しむユーザー層は残っていく」(同)とみる。

パワー・アンプは「並行配置」が特徴

 コントロール・アンプ「SC-11S1」は,新開発のオーディオ用イコライザ(フォノ・イコライザ)を搭載した。マランツは伝統的にNFB(negative feed back:負帰還)型イコライザを採用しているが,NFB型は低音域と高音域で負帰還量が異なるために低域と高域で音質に違いが出るという課題があった。新開発のNFB型イコライザではオープン・ループ時の周波数特性を,いわゆるRIAAカーブとし,CR型のRIAAネットワークを介して帰還することで負帰還量をほぼ一定にできたという。アンプ・モジュールも新開発品を採用している。信号パスを短くし,スルー・レートを200V/μs以上にまで高めたことが特徴だ。

 パワー・アンプ「SM-11S1」は,1電源式のステレオ・アンプ。左右チャネル用の回路基板を,前面パネルを手前にした状態で前後に並行配置した(下図)。これにより,電源ユニットから両基板までの距離が短くかつ等しくなる。このレイアウトにより,雑音の低減や瞬時電流供給能力の向上といった効果が得られたとする。前機種でも並行配置は採用しているが,今回は整流回路を左右のプラスとマイナス用にそれぞれ独立して搭載した。


SM-11S1の筐体内部

 SACDプレーヤ「SA-11S2」は,前機種ではなく最上位機種の設計をもとに開発した。「最上位機種との違いは,アイソレータを搭載しなかったこと,電源トランスを小さくしたことくらい」という。電源トランスは最上位機種の120VAには及ばないものの80VAと高容量の品種を新開発した。

 SACDプレーヤは既に開発が完了して量産目前といい,2007年9月に発売する予定。アンプは開発の最終段階で,こちらは2007年10月の発売を目指す。希望小売価格(税込み)は,コントロール・アンプ「SC-11S1」が47万2500円,パワー・アンプ「SM-11S1」が57万7500円,SACDプレーヤ「SA-11S2」が47万2500円である。

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