外光の入るロビーに複製画を展示する。
外光の入るロビーに複製画を展示する。
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展示は2008年3月までの予定。来館者が触って汚れることが考えられるので,状態によっては途中で新しいものに取り替える。
展示は2008年3月までの予定。来館者が触って汚れることが考えられるので,状態によっては途中で新しいものに取り替える。
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細かな筆遣いを再現している。
細かな筆遣いを再現している。
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 国立西洋美術館とセイコーエプソン,エプソン販売(本社東京)は,同館所蔵の油彩画「睡蓮」(すいれん,1916年,Claude Monet)を拡大プリントし,同館のロビーに2007年7月31日から展示する。これは,国立西洋美術館が手がけるプロジェクト「OPEN museum」の一環として行うもので,セイコーエプソンとエプソン販売は,同プロジェクトのオフィシャル・パートナーとの位置づけ。複製画の作成には,セイコーエプソンの大判インクジェット・プリンタ「PX-9500」を採用し,エプソン販売が出力までの作業を担当した。

 国立西洋美術館のOPEN museumは,「美術を通して人々が出会う開かれた美術館」をコンセプトとするプロジェクト。睡蓮の複製の場合は,展示室内よりも明るいロビーで間近から絵画を鑑賞することで,Monetの筆遣いなどをじっくりと味わえる。それによって美術に親しみを持ってもらうのが同館の目的だ。これまでセイコーエプソンでは,いわさきちひろや東山魁夷(かいい)の絵を複製・復元した実績を持つ。そのことから今回,3者の協力が決定。プロジェクトの第1弾として,同館の象徴的な作品である睡蓮を複製した。

 睡蓮の原画の大きさは,約200×200cm。複製画では,これを一辺280cm以上に拡大した。デジタルカメラで撮影した画像を基にPX-9500で出力。紙は,エプソンの純正紙を使用している。原画との色合わせを5~6回行い,完成までには約1カ月を要した。

 作成に当たって気を使ったことの一つが「色温度(光源に含まれる,青紫光と赤色光の相対的な強さ。単位はK)の調整」(エプソン販売エプサイト クリエイティブ ラボラトリーのクリエイターである深見久美子氏)。一般に,展示室内の明かりは色温度が低い(黄色を帯びている)が,外光は高い(青色が強い)。そのため,同じ絵でも展示室の内外では色合いが違って見えてしまう。そこで,外光の入るロビーでも印象が変わらないように,色調を調整したという。

 同プロジェクトに協力することで,セイコーエプソンとエプソン販売は,細かな部分まで忠実に再現できるプリンタの技術力をアピールする。今後も,同館所蔵の作品を複製する計画だ。さらに両社には,同プロジェクトを通して,製品の品質を向上させる狙いもある。エプソン販売では,社内にショールーム・ギャラリー「エプサイト」を設置しており,今回もエプサイト所属のクリエイターが作業に当たった。「自社で扱う製品を自ら使っている。それにより,問題点などを素早くフィードバックさせられるのが強み」(深見氏)という。


訂正:掲載当初,使用したプリンタが「PX-500」となっていましたが,正しくは「PX-9500」でした。お詫びして訂正いたします。なお,記事は修正済みです。

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