「当社は松下電器の連結子会社ではなくなります」--。日本ビクター 代表取締役社長の佐藤国彦氏は,緊張のためやや声を震わせながら,大挙して押し寄せた報道陣に挨拶した。日本ビクターとケンウッドの経営統合に関する共同会見には,日本ビクターの筆頭株主である松下電器産業と,日本ビクターの第三者割当増資を引き受けるスパークス・グループの社長も登壇し,ビクターとケンウッドの経営統合に対する考えや想いを語った。「日本ビクターとシナジーを発揮するには,体質的に相容れないものがあった」と述べた松下電器 代表取締役社長の大坪文雄氏の見解など,登壇者の発言の要旨をここで紹介する(Tech-On!の関連記事「【速報】ビクター,ケンウッドと経営統合へ」,「【続報】ケンウッドが日本ビクターに求めるシナジー効果とは…」)。

日本ビクター 代表取締役社長 佐藤国彦氏


 当社は営業利益で2年連続,最終損益で3年連続の赤字を継続している。こうした状況のなか,強力なパートナーと手を結ぶことができ心強く感じる。(第三者割当増資を引き受ける)ケンウッドとスパークス・グループには敬意を表したい。
 増資が実施された日をもって,当社は松下電器の連結子会社から外れる。(連結子会社となって以来)53年間に渡り,松下電器から有形無形の経営支援をうけた。歴代の経営陣,従業員を代表して,心より感謝申し上げる。





ケンウッド 代表取締役会長 河原春郎氏


 コンシューマ・エレクトロニクス産業は近年,成熟化が進行し,グローバルな競争が激しくなった。日本メーカーの存在感は薄れつつある。とりわけ専業メーカーが大変苦しんでいる。当社も例外ではない。事態を打開し,自力成長の限界を超えて企業価値を拡大するには,M&Aや戦略的業務提携が有力な手段と考える。成熟産業の構造改革の最後の大仕事が業界再編にあると考え,あらゆる機会を検討してきた。
 (ケンウッドと日本ビクターが一緒になり)これを一つの核にしながら,もう少し大きな枠組みで将来,日本の専業メーカーが大きな力を持てるような施策を検討していきたい。




スパークス・グループ 代表取締役社長 阿部修平氏


 日本ビクターとケンウッドの資本業務提携の成功に向けて,株主の立場から最大限の支援をしたい。
 (我々の視点は)日本の民生用機器の製造業の復活にある。投資家という新しい軸を入れて,日本ビクター再生の取り組みをしっかりしたものにしたい。







松下電器産業 代表取締役社長 大坪 文雄氏


 歴史を振り返ると1954年の日本ビクターの経営危機の際に資本参加し,同社は連結子会社となった。しかし自主自立の精神に基づき,それぞれ製品開発に取り組んできた。VHS型VTRの世界標準化など,日本の家電業界の発展に大きく貢献した。
 昨今の技術革新やグローバルな競争激化から,日本ビクターは業績が低迷し,抜本的な事業再建が不可避となった。松下電器としてもグループ戦略の見直しを進めきた。(オーディオ・ビジュアル事業の責任者だった時代から)私は日本ビクターとのシナジーをどう発揮するかを追求してきたが,事業の重複やダブル・ブランドなど,体質的に相いれないとの実感があった。
 日本ビクターは連結子会社から外れることになる。しかし「ビクター・JVC」ブランドは日本の電機産業の貴重な財産だ。新たな枠組みで切磋琢磨し,電機産業の発展にいっそう貢献したい。
 今回のスキームで一番重要なのは,日本ビクターの再生にある。そのためにケンウッド,とりわけ河原会長にリーダーシップを発揮してもらいたい。