WWWの技術でパソコン向けアプリケーション・ソフトウエアが開発できる技術として注目を集める「Adobe Integrated Runtime(AIR)」(開発コード名は「Apollo」)。2007年6月のベータ版公開を受けて,アドビシステムズが2007年7月10日に開発者向けに「Adobe AIR Developers Night」を開催した。WWW向けに開発したコンテンツが,ほぼそのまま何も変更せずにごく普通のアプリケーション・ソフトウエアとして動く。AIRの特性を生かした新たなサービスはどのようなものか,代表者によるデモンストレーションが行われた。

 まず最初に,アドビシステムズ プロダクト&セールスエンジニアリング部 プロダクトスペシャリストの太田禎一氏が最新のベータ版で盛り込まれた機能を紹介。続いて米Adobe Systems Inc.のAdobe Flash Technical Product ManagerのRichard Galvan氏がFlashコンテンツの作成ツールである「Adobe Flash」に組み込むプラグインで,AIRアプリケーションを作成する機能を紹介。「まだ米本社でも開発チームしか見たことがない」(Galvan氏)機能を日本の開発者向けに紹介した。既存のFlashコンテンツに何も手を加えずに,デスクトップ・アプリケーションに変換してみせた。

 続いて「Adobe AIR Demo Battle」と称して,6社のデモが次々披露された。その中でも完成度が高いと感じられたのが,サイトフォーディーが披露したデモで,拡張機能を持ったウィジェットを披露した。当初1個の独立したウィジェットだったものを組み合わせた「統合ウィジェット」に発展させた。複数のウィジェットを組み合わせてウィジェットとして統合し,設定などを統一して操作できるようにしたものである。さらにそれを取り出して大きく表示させたり,大きく表示させるものを配置するなどの「拡張ウィジェット」にしてみせた。最後に同じ機能を利用して,米Salesforce.com,Inc.のサービスと結びつけてビジネス・ソフトとして使える「ビジネス用ダッシュボード」に発展させていた。デモの内容は同社サイトで公開される(一部公開済み)。

 またティーケーラボは「AIR SPACE」と呼ぶプッシュ型の配信サービス用ウィジェットをAIRを使って実現。サーバー・ソフトウエアにはプッシュ型の配信機能を持つAdobe社の「Live Cycle Data Service(LCDS)」を利用した。LCDSからの情報をウィジェットで受信し,例えばURLの通知であれば即座に音を出すと同時に表示を変えてユーザーに情報の到着を知らせる。動画のプッシュ型配信も盛り込んだ。その際,プッシュ型で配信するのは更新通知のみで,通知を受け取った後にウィジェットが動画をFTPなどを通じてサーバーからダウンロードする。ダウンロードが完了した時点でユーザーには情報の到着を通知する。

 意外性があったのは電通国際情報サービス(ISID)のひがやすを氏の登場。ひが氏はJavaで作られたオープンソース・ソフトウエア「Seasar 2」の開発者として知られている。ひが氏が紹介したのはISIDで開発中のパッケージ・ソフトウエア「Coraleaf」。企業の中に散在する「Delphi」や「Visual Basic」で作られたクライアント-サーバー・ソフトウエアをAIRアプリケーションに変換するデモを実演した。

 AIRという開発環境の特性から,「Developers Night」という名前でも参加者は開発者だけでなく,デザイナーも多数参加していた。デモを披露した人もWWWサイトのデザイナーとソフトウエア開発者が混在しており,デザイナーと開発者が一体となったコミュニティが生まれてきていると感じられた。