電池の原理を利用して除菌するデバイスの構造概念
電池の原理を利用して除菌するデバイスの構造概念
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除菌試験結果:10<sup>5</sup>cfu/mLの大腸菌あるいは黄色ブドウ球菌を含む試験液に除菌材料を塗布した多孔質構造の基材を浸し,菌数の変化を培養法により測定(日本食品分析センターが検証)
除菌試験結果:10<sup>5</sup>cfu/mLの大腸菌あるいは黄色ブドウ球菌を含む試験液に除菌材料を塗布した多孔質構造の基材を浸し,菌数の変化を培養法により測定(日本食品分析センターが検証)
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多孔質構造
多孔質構造
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多孔質構造の利点:表面積が広い
多孔質構造の利点:表面積が広い
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電池構造の除菌/抗菌機能
電池構造の除菌/抗菌機能
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除菌デバイス表面に微生物が付着する様子
除菌デバイス表面に微生物が付着する様子
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 松下エコシステムズは,酸化還元電位の異なる2種類の金属微粒子を利用して水を除菌し,さらに金属の持つ抗菌作用で微生物の繁殖を抑える除菌・抗菌材料を開発した(発表資料)。この材料による除菌デバイスを用いれば,従来のフィルタによる除菌方法と違い,微生物の死骸が水中に残存することが少ないため,より清潔な状態を保てるとしている。実験では,水中の大腸菌,黄色ブドウ球菌を2時間で99%以上除去できたという。また,この材料は,金属微粒子と導電性樹脂材料をペースト化したもので,様々な形状に加工したり,基材に塗布したりできる。

 水中の除菌方法として,これまでフィルタなどが用いられてきたが,濾過した微生物で目詰まりし,それが汚れや臭いの発生源になりやすいという問題があった。一方,抗菌手段としては,薬剤や銀(Ag)などの抗菌剤を樹脂に練り込む方法があったが,これは接触した微生物には効果を発揮するものの,水中に浮遊する微生物を取り除く作用までは持ち合わせていなかった。

 今回の開発では,酸化還元電位の異なる金属として銅(Cu)と亜鉛(Zn)を採用した。これらの微粒子を混合したものに導電性樹脂材料を配合し,ペースト状にする。導電性の付与により,CuとZnは水中で電位差を生じる電極となって,電源なしに起電する電池構造を形成する。このペーストを基材に塗布し,除菌・抗菌デバイスとした。微生物は帯電しているため,このデバイスを水中に浸せば,電気的な力を利用して微生物を誘引できる。誘引した微生物はデバイス表面に付着するため,従来の方法のように微生物の死骸が水中に残存することが少ないとする。さらに,電極材に採用したCuやZnには抗菌作用があるため,誘引した微生物の繁殖を抑制できる。

 ペースト化したことで,フィルタやスポンジのような多孔質の基材にも塗布できるようになった。多孔質構造では電極の表面積を広く取れるため,微生物が接触しやすく,より大きな効果が期待できる。この材料は低温で硬化するため,樹脂や繊維,フィルムなどにも加工できるという。

 水が溜まるドレン・パンやタンクの表面など,微生物の繁殖を抑え水の滑りや臭いの発生を防ぎたい水周りの機器に向け,広い応用を期待している。なお,この成果は,2007年8月30~31日に開催される第34回 日本防菌防黴学会にて発表する予定。

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