自動車の安全技術が質的な進化を遂げ始めた。これまでの安全技術は、衝突時の被害を軽くする「被害軽減」が中心だった。今後は、衝突そのものを起こさない「衝突回避」が中心になっていく。

 衝突回避は、これまでのある意味究極の安全対策として自動車関係者とっては長年の夢だった。ただし、衝突回避のためのブレーキやステリアリングを自動制御する「プリクラッシュ・セーフティ」や、運転者に危険を知らせたりする「運転支援システム」を、あまり強く利かせすぎると、ドライバーがシステムに頼りすぎてしまったり、運転が得意なドライバーの操作を干渉してしまったりする危惧があった。このため、衝突時の自動車の変形を最適化して運転者が受ける衝撃を最小限にとどめる「ポストクラッシュ・セーフティ」や、衝突時の被害を軽減する程度のプリクラッシュ・セーフティにとどめていた。

国土交通省が法改正、自動車メーカーも徐々に導入


 このような状況に対し、増加傾向にあった事故件数を減らすため、政府がプリクラッシュ・セーフティ・システムや運転支援システムの実用化を促進する施策を進めている。例えば、国土交通省が2005年11月に自動ブレーキに関する技術指針を改正、自動ブレーキが作動するタイミングを、従来の衝突前0.8秒から1.4秒に前倒しした(図)。また、警察庁は「安全運転支援システム(DSSS)」推進している。

 自動車メーカーも、ドライバーが自動制御に頼りすぎたり、運転が得意なドライバーの操作を干渉する危険を回避できるように注意を払いながら、プリクラッシュ・セーフティ・システムや運転支援システムの導入に向けた動きを加速させ始めた。このようなシステムは、大きく分けて2種類がある。
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図◎プリクラッシュ・セーフティ・システムで衝突回避へ
図◎プリクラッシュ・セーフティ・システムで衝突回避へ
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