UMBの送受信システムを搭載した自動車で実演
UMBの送受信システムを搭載した自動車で実演
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車内に設置したディスプレイで各種アプリケーションを表示した
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1080iのHDTVストリームを表示した
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UMBのスループットの変化。送受信環境が変動しても,紫の部分(HDTVストリーミング)の領域は優先的に保持している
UMBのスループットの変化。送受信環境が変動しても,紫の部分(HDTVストリーミング)の領域は優先的に保持している
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64値QAMのIQコンスタレーション
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UMB利用サービスは2009年ころから登場する見込み
UMB利用サービスは2009年ころから登場する見込み
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モバイルWiMAXは対抗技術と位置づける
モバイルWiMAXは対抗技術と位置づける
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 米QUALCOMM Inc.は,同社が推進する次世代の移動体通信規格「UMB(ultra mobile broadband)」の,移動体での送受信を実演した。同社が2007年6月20日から米カリフォルニア州サンディエゴで開催中の「BREW 2007 Conference」に合わせ,記者向けに公開したもの。UMBの移動環境における送受信の実演は今回が初めて。システムが実働可能であることを示し,サービス適用への準備が整っていることをアピールする狙いだ。

チップセットは2008年第1四半期に出荷へ

 UMBは,多重アクセス方式にOFDMAを用いる伝送規格。20MHz帯域幅を使うときに,下り方向で最大288Mビット/秒,上り方向で最大75Mビット/秒のデータ伝送を実現できる。利用する帯域幅が1.25MHz~20MHzの間で可変であることや,レイテンシがCDMA2000 1xEV-DO rev.Bの約半分となる16ms以下と短いという特徴がある。QUALCOMM社は既にUMB向けのチップセットの出荷予定を発表している。最初の端末向けチップセットの名称は「MDM8900」で,2008年の第1四半期にサンプル出荷する予定である(発表資料)。

 今回の実演では,UMBの送受信システムを搭載した自動車を使った。2.1GHz帯の周波数において,20MHz帯域幅を使って,下り方向で最大40Mビット/秒,上り方向で最大10Mビット/秒のTDDによる通信システムを構築した。アクセス・ポイントは三つ使っている。アクセス・ポイントからの電波の出力は20Wで,端末側は200mWで出力した。MIMO技術を用いており,アクセス・ポイントからの送信時には4本のアンテナを,受信時には2本のアンテナを使っている。

 実演では,HDTV動画ストリームの表示,ビデオ会議,HTTPによるWWW閲覧,ベスト・エフォートによるファイル転送などのアプリケーションを同時に実行した。HDTV動画表示を優先させるといったQoS処理が可能である。移動環境に応じて全体のスループットが低下しても,HDTV動画には乱れの無いような処理を実現している。S/Nに応じて一次変調方式を適応的に切り替える「アダプティブ・モジュレーション」に対応しており,実演では64値QAMのIQコンスタレーションの状況なども見せていた。実演では自動車の移動速度は時速40~60kmだったが,時速約100km程度でもスループットが低下しないことを実測しているという。

 QUALCOMM社はUMBをモバイルWiMAXの対抗技術と位置づけており,既存の携帯電話事業者や新規サービス事業者への採用を働きかけていく狙い。なおUMBは,米CDMA Development Group(CDG)が2006年末に命名した規格で,以前はCDMA2000 1xEV-DOのRev.Cと呼ばれていた。