経済産業大臣の諮問機関である消費経済審議会傘下の製品安全部会が2007年6月18日に開かれ,Liイオン2次電池の消費生活用製品安全法(消安法)の特定製品への指定と,その際に利用する技術基準作りに関する議論が始まった。今回の議論では,指定対象を「容量600mAh以上のLiイオン2次電池の組電池」で「携帯用電子機器に使用するもの」にする方針が示された。なお,ここで言う「組電池」とは電池セルと保護回路を組み合わせたモジュールを指し,セル数が1個でも該当する。

 また,国が定める技術基準の方向性としては,(1)電池と搭載機器の安全性能に対する技術基準にすること,(2)現行の安全基準である「JIS C 8712」にいくつかの試験を追加するという方針が示された。

 追加する試験としては「技術基準のイメージ」が提示された。具体的には,完全充電したセルの内部に金属異物を挿入した後に圧力を掛けて強制的に短絡させる「強制内部短絡試験」や電池モジュールを機器に装着した状態で機器ごと落下させる「自然落下試験」。以下,「過充電保護」「充電可能温度域外の充電保護」,「充電停止動作の確保」という5種類の試験が提示された。

 これらの試験の内容は,電子情報技術産業協会(JEITA)と電池工業会(BAJ)が共同で策定し,2007年4月20日から公表している「ノート・パソコンで利用するLiイオン2次電池の安全利用のための手引書」(PDF形式の手引書)で推奨されている試験方法とほぼ共通している(Tech-On!関連記事1Tech-On!関連記事2)。

 今後,経産省はBAJなど業界団体の協力を得ながら,技術基準の案を詰める。案が完成次第,製品安全部会を開催して,一刻も早く議論を前に進めたい考えだ。「技術基準作りは簡単ではないが,数週間から長くても数カ月で作る。夏の間に次回の製品安全部会を開きたい」(経産省の担当者)とする。

ハイテク製品の指定は初めて

 消安法の特定製品は「一般消費者の生命又は身体に対する危害の防止を図るため」に指定されるもの。対象になると,国が定めた技術基準に適合するかどうかをメーカーなどが自主確認あるいは外部の検査機関で確認したことを示す「PSCマーク」を製品に添付して販売する必要が出てくる。特定製品は今のところ,レーザー・ポインターや家庭用の圧力なべ,バイク用のヘルメット,登山用ロープなど全部で6品目しかない。Liイオン2次電池のようなハイテク製品の指定は初めてになる。

 Liイオン2次電池を特定製品に指定する方針は2007年4月3日に行われた製品安全部会で示された。2006年9月13日に同部会の下部組織として発足し,同日に報告書を提出した「ノートパソコン用リチウムイオン電池安全確保WG」の結論を踏まえた。2007年4月5日から5月4日に掛けてパブリックコメントを実施した。寄せられた意見の概要と,意見に対する経産省の考え方も今回同時に公表された。