米Google Inc.は2007年5月30日,WWWアプリケーション・ソフトウエアをインターネットに接続していなくても利用可能にするツール「Google Gears」のベータ版を公開した。同社が全世界で開催する開発者向け会議「Google Developer Day2007」で明らかにした。例えば同社が提供する「Google Docs & Spreadsheets」は,ネットワーク接続できない環境では利用し続けることができなかった。Google Gearsに対応させれば,ネットワーク接続状況を気にせずに利用し続けることが可能になる。

 Google Gearsは大きく三つの機能を備える。(1)クライアントにリレーショナル・データベースを備え,アプリケーション・ソフトウエアが利用するデータを保存させる,(2)ローカル・サーバー機能により,ダウンロードしたアプリケーション・ソフトウエアをキャッシュとして保持しておき,擬似的にサーバーとして動作させる,(3)ワーカー・プールと呼ぶ非同期アクセス機構により,入出力の多いアプリケーション・ソフトウエアでも効率的に動作を可能にする,である。これらにより,ネットワークが切断した後でもアプリケーション・ソフトウエアが動作し続けられ,アプリケーション・ソフトウエアがネットワークにつながった時点でサーバー側のデータと同期させることによってアプリケーション・ソフトウエアの利用を継続できる。

 Google Developer Day2007の会場では,Google社がベータ版として提供しているRSSリーダー・ソフトウエア「Google Reader」にGoogle Gearsを組み込み,オフラインでニュースを閲覧できるデモを実演して見せた。

 アプリケーション・ソフトウエアのオンライン化は,ネットワーク環境さえあればどこからでも利用でき,複数ユーザー間で情報を共有しやすいといったメリットから,今後広まっていく可能性が高い。その際に最大のネックとなるのがオフライン状態での利用であり,Google社のような実績あるベンダーがブラウザー向け拡張機能を提供するのは開発者にとってありがたいはず。ただし「使いやすいかどうかは,APIを精査してみないとわからない」(会議に参加した開発者)という声もある。また,オフライン化を支援するツールはほかにも「Dojo Toolkit」がすでに存在する。Google Gearがどの程度使われるかは,その出来次第といったところだ。