松下電器産業は,同社で製造した電子レンジ12機種合計193万1740台,冷蔵庫5機種合計30万3487台,衣類乾燥機11機種合計82万1578台について,発煙・発火に至る可能性があるとして,無料で部品交換することを発表した。同社は対象製品の内訳,無償修理を決定するに至るまでの経緯,これらの製品で過去に発生した事故による被害の概要,事故の原因などをまとめ,ホームページで公開している(ニュース・リリースユーザーへのお知らせ)。

 大規模リコールに至った製品の不具合は,2000年11月25日~2007年3月17日に発生した事故を再評価する過程で発見された。同社では,2006年5月から製品安全確保の取り組みを強化しており,過去の事故事例についても見直しを行っている。以前には偶発的な事故と考えられた事故に共通の原因があり,再発の可能性があると判断して事故情報の公表,無償修理に踏み切った。

 リコールの対象となるのは,電子レンジは1988年12月から1993年12月までに製造した製品のうち12機種。冷蔵庫は1989年2月から1992年10月までに製造した製品のうち5機種。衣類乾燥機は1993年8月から2001年12月までに製造した8機種である。これとは別に,松下電器産業が三菱電機にOEM供給した乾燥機,計3万8000台もリコールの対象になる。

電子レンジはダイオード・ブリッジが破壊

 電子レンジの発火・発煙事故の原因は,制御基板に搭載したダイオード・ブリッジの破損である。

 製品後部の吸気口がホコリの堆積などで塞がれた場合,製品の冷却性能が低下して,ダイオード・ブリッジが規格値を超える高温にさらされることがある。こうした条件で繰り返し製品を使用した結果,ダイオード・ブリッジ内部のハンダの品質によっては,ハンダにクラックが生じる。この結果,素子の内部にスパークが発生し,素子を溶かして飛散させ,さらに近接する樹脂製のドアフックに引火する。

 同社によると,上記のような原因で発生したとみられる発火・発煙事故が,2001年から2007年にかけて9件発生していたという。同社は,事故機と同じダイオード・ブリッジを搭載し,ドアフックの難燃グレードが低く,かつドアフックがダイオード・ブリッジに近接する12機種を,今回のリコールの対象とした。

冷蔵庫は起動リレーが発火

 冷蔵庫の発火・発煙事故の原因は,起動リレーの内部素子の破損である。

 冷蔵庫が壁に隙間なく設置されていると,通気口にホコリがたまるなどして,機械室内の圧縮機が高温になりやすくなる。この結果,圧縮機に隣接する床や壁も高温にさらされ,床や壁の材質によっては塩素などの腐食性ガスが発生する。このガスが,起動リレーにおける温度保護素子(PTC素子)の電極部においてAg(銀)原子の移動(マイグレーション)を起こす。この結果素子が割れ,発煙・発火に至る。

 起動リレーの破損が原因とみられる発火・発煙事故が,2001年から2006年にかけて5件発生していたという。同社は,事故機と同じ構造の起動リレーを有し,かつ機械室が高温になりやすい5機種をリコールの対象とした。

乾燥機はリレー端子部のハンダにクラック

 乾燥機の発火・発煙事故の原因は,リレー端子部のハトメ部のハンダに発生したクラックである。

 リレー端子部のハトメに加工上の不具合があると,ハトメ部のハンダの量が不足することがある。この場合,温度の上昇・下降を繰り返すとハンダにクラックが生じて接触不良となり,スパークが発生する。このときに生じる熱により,制御基板に塗布した難燃性樹脂から可燃性ガスが発生する。この結果,近接した樹脂製の操作パネルに引火する。

 ハトメ部のハンダ割れに起因するとみられる発火・発煙事故は,2000年から2007年にかけて9件発生していたという。同社は,事故機と同じリレー,部品配置,ハトメ方式を採用する製品8機種をリコールの対象にした。