電子情報技術産業協会(JEITA)の会長にシャープ代表取締役会長の町田勝彦氏が就任した。シャープからJEITAの会長が選出されるのは初めて。町田氏は「関西の家電メーカーとして,これまでと違った切り口で課題解決を図っていきたい」と抱負を述べた。


新会長の町田勝彦氏(左)と任期を終えた前会長の秋草直之氏(右,富士通の代表取締役会長)

 任期の1年間に取り組みたいテーマについて町田氏は,安倍内閣の提唱する「イノベーション戦略」と「オープン戦略」を引用し,両テーマについてJEITAとして貢献したいとした。

 具体的には,イノベーション戦略への行動については(1)環境・エネルギー問題に対して技術革新をもって貢献すること,(2)2011年の地上アナログ放送停波を控え,地上デジタル放送へのスムーズな移行を促すこと,(3)税制問題の解決,特に,企業の研究開発活動やIT投資を支援する税制の拡充に向けて提言すること,の3点である。オープン戦略への貢献については,自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)の締結,WTOでの活動,知的財産権の保護など「オープン」な通商環境の確立に向けた提言を挙げた。

韓国FPD連合で「材料・装置分野の競争が激化する」

 町田氏は,会見の場で薄型テレビの動向についても語った。「テレビ市場は,もうすぐ世界で2億台という規模に達し,その30%が薄型テレビである。今後も成長が期待できる産業だ」と語る。画面サイズの需要動向については「現状では,米国や中国では50型以上の大型品への需要が強い。これに対して,日本や欧州では40型クラスが主流であるのに加え,『一家に一台』から『一人に一台』へと普及が進み,個人の部屋に置く30型前後もボリューム・ゾーンになる」と見解を語った。

 さらに町田氏は,第10世代のガラス基板を導入する液晶パネル新工場の建設計画についてもコメントした(Tech-On!関連記事)。「まだ地権者の承諾を得ておらず,社内的な決済もしていない。まあ災害など突発的な障害が起きない限り,恐らく(第10世代工場の建設は)決定になる。今年の7月には発表できるだろう」と語った。

 2007年5月に入って,韓国のフラットパネル大手のSamsung Electronics Co.,Ltd.とLG Electronics,Inc.,LG.Philips LCD Co., Ltd.,Samsung SDI Co.,Ltd.の4社が,部品の相互調達や研究開発などで広範な提携を結んだ。これについて町田氏は「台湾メーカーに比べて韓国勢の競争力が弱くなり始めている。今まで台湾から部材を大量に購入していたが,もっと国内で相互に供給したいという考えだろう。提携の効果としては,パネルよりも材料や装置に関する部分が大きいと考えている。これまでは日・韓・台のパネル・メーカーの間で競争が激しかったが,今後は材料メーカー,装置メーカーの競争も激化しそうだ」との見解を示した。

「有機ELのトップ・メーカーにはいつでもなれる」

 有機ELテレビ市場の展望については次のように語った。「小型品は普及していくだろうが,大画面のテレビとなると寿命確保が難しい。一番の問題は材料である。現状では2万時間ほどしか保たないだろうが,実用化には6万時間は欲しいところだ。今のところ(シャープとして有機ELテレビ事業を)やるつもりはない。ただし,液晶テレビの製造設備は8割がそのまま有機ELの製造に転用できる。お好み焼きでいえば,具が豚玉とイカ玉で違うだけで,具を焼く鉄板は同じ。材料さえ決まれば,当社はいつでも有機ELのトップ・メーカーになれる」(同氏)。