図 三菱電機 執行役社長 下村節宏氏
図 三菱電機 執行役社長 下村節宏氏
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 三菱電機は2007年5月17日に記者発表会を開き,2007年度(2007年4月~2008年3月)の経営戦略について説明した。同社は2001年度に営業損失を計上するなどの苦しい時期を経て,事業の選択と集中を進めてきた。その結果,2006年度は当初の予想を上回る好業績をたたき出し,売上高営業利益率は6%となった。経営目標として掲げていた「5%以上」を早くもクリアしたことになる。同社の執行役社長 下村節宏氏は「経営施策がきちんとできていれば,現在あるすべての部門を(今後も)やっていくことができると考えている」として,選択と集中の路線から転換しつつあることをほのめかした。

 とはいえ,同社としてまだ課題があるとする事業部門もある。2006年度の売上高営業利益率を事業部門別にみると,情報通信システムや家庭電器は5%未満,重電システムは5%強にとどまった。そのため,2007年度の全体の目標は「5%以上」に据え置き,課題とする事業部門に力を入れていく。下村氏は次の目標として数字にこだわるよりも「世界で勝てる新しい技術・製品ができれば,それが新事業に向けてのステップになる」と,研究開発への期待を見せた。実際,2003年度以来1300億円台だった研究開発費を,2007年度には1514億円まで引き上げる予定だ。売上高に占める割合も2006年度の3.4%から2007年度には3.8%へと高める。

 液晶テレビ事業については,下村氏自身「苦しい時期を過ごした」と述べるも今後も重要な事業と位置付ける。同社では液晶パネルの製造は行っていないが,他社製の液晶パネルを使った液晶テレビであっても,幅27mmの狭額縁や5.1チャネルの内蔵スピーカなど,自社の技術を生かした特徴を盛り込んで差異化を図る方向性が見え始めたとする。また,家庭用の液晶テレビから業務用の大型LEDディスプレイまで,幅広い映像機器をそろえることで,開発や調達での相乗効果が見込めるという。空調機器や住宅家電,オール電化機器などの製品群と組み合わせて販売できる相乗効果にも期待する。

 好業績を支える産業メカトロニクス部門については,「将来的には風向きがきつくなると考え,耐えられる体制を整えてきた。2007年度は,それが試される年になるのではないか」との見通しを語った。従来は,PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)やレーザ加工機などと,機器を制御する生産設備などを取り扱ってきた。今後は,製造実行システム(MES:manufacturing execution system)や業務計画システム(ERP)といった,FA(factory automation)に関する上位のシステム構築に注力していくとする。