図1 排泄介護に向けた「採尿システム」。採尿パッド(左)は紙おむつと組み合わせて使用する。チューブがあるため,常時使用というよりは夜間や外出時の使用を想定しているようだ。夜間に使えば,介護する側,される側の精神的・肉体的な負担を軽減できる。本体(右)の重さは1.2kg。2次電池で約8時間駆動するので,車椅子などに取り付けて外出時に利用することも可能。
図1 排泄介護に向けた「採尿システム」。採尿パッド(左)は紙おむつと組み合わせて使用する。チューブがあるため,常時使用というよりは夜間や外出時の使用を想定しているようだ。夜間に使えば,介護する側,される側の精神的・肉体的な負担を軽減できる。本体(右)の重さは1.2kg。2次電池で約8時間駆動するので,車椅子などに取り付けて外出時に利用することも可能。
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図2 採尿パッド。PETにカーボンの電極や配線を印刷したセンサを内蔵する。
図2 採尿パッド。PETにカーボンの電極や配線を印刷したセンサを内蔵する。
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図3 採尿パッドをめくり,センサの接続端子をコネクタで挟んで接続する。コネクタ側には金属端子がある。コネクタからの信号線は本体につながっている。
図3 採尿パッドをめくり,センサの接続端子をコネクタで挟んで接続する。コネクタ側には金属端子がある。コネクタからの信号線は本体につながっている。
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 日立製作所とヘルスケア関連製品を扱うユニ・チャームは,尿を吸引するポンプを内蔵した採尿器本体と採尿パッドを組み合わせた「自動採尿システム」を開発した(図1)。高齢者など,おむつを使用する成人に向ける。採尿パッドと本体はチューブで接続されている。採尿パッドにセンサを内蔵しており,尿を検知すると本体のポンプが運転を開始する。チューブを通じて尿を吸引し,本体のタンクに溜める仕組み。採尿パッドは1日に1~2回交換するだけで良い。従来の尿取りパッドに比べ交換回数を減らすことができる。従来は1日に5~7枚の尿取りパッドを使用していた。今回の製品を使えば廃棄物の量を1/10~1/40に減らすことができるとする。

 尿を検知するセンサには,PETフィルムにカーボンを印刷したものを用いる(図2,図3)。複数対の電極を備え,水分があると電極間が導通する仕組みを利用して,尿を検出する。採尿パッドを廃棄する時の利便性を考え,採尿パッドと分別せずに廃棄できるPETフィルムとカーボンという組み合わせを採用した。なお,尿を検出すると本体のポンプが稼働して尿を吸引するため,電極間で電気は再び流れなくなる。便や汚れがひどい場合は,ポンプが稼働しても導通した状態のままになるため,本体のアラームを鳴らして採尿パッドの交換を促すようになっている。

 ポンプには,樹脂製の小型ロータリー式空気ポンプを採用した。モータ部分を含め,直径は約30mm,長さは約70mmである。ポンプで直接液体を吸入するとつまる可能性が高まるため,今回の製品では尿を溜めるタンクを負圧にする真空ポンプ方式を採用している。ポンプの排気速度は80mℓ/秒で,尿の吸引速度は30mℓ/秒である。このポンプは,性能的には金魚などを飼育する場合に使う水槽用空気ポンプと似ているという。しかし,市場に出回っているポンプはダイヤフラム式を採用しており,振動や騒音が生じやすいという課題があった。ダイヤフラム式で振動や騒音を抑えようとするとポンプが大型化したり重くなったりしてしまうため,今回は新たに別のポンプを開発するに至ったとする。ポンプの開発は日立製作所の機械研究所が担当した。同じロータリー式の小型液体ポンプは,同社の水冷式ノート・パソコンで採用していたという。

 今回の製品の特徴の一つが,採尿データを記録できること。本体にはタンクに溜まった尿の量を測定・表示する機能を搭載しており,得たデータは本体に内蔵するマイコンに記録できる。パソコンなどを使ってこのデータを管理することで,排尿のタイミングや量を調べられる。こうしたデータを使うことで,患者をトイレに誘導するといった対応も可能だ。今後,本体に通信機能を搭載し,ネットワークと接続したり,携帯電話機などに通報するといった機能を付加する可能性もあるという。

 発売時期は未定。できるだけ早く発売したいとするものの,従来の紙おむつなどとは違った流通経路が必要であるため,発売までにはまだ時間がかかると見込む。価格も未定である。センサや尿を吸引するための特殊成形部品など従来の尿とりパッドにはない部品を内蔵するため,生産コストは従来品に比べると高い。従来の尿取りパッド5~7枚分の価格を目指すとする。