米国ネバダ州ラスベガスで開催された「NAB2007」では,いわゆるIPTVサービスの普及に期待を寄せる機器メーカーやソフトウエア開発企業が,IPセットトップ・ボックス(以下,IP STB)や,IP STB向けのソフトウエアなどの試作品や新製品を出展した。
IP STB大手の英Amino Communications Ltd.は,録画機能を備えるIP STBの新製品として,HDTV対応の新機種「AmiNET530」の試作機を出展した(図1,図2)。H.264およびMPEG-2のによる1080iおよび720p映像の復号化に対応する。放送サービスの録画やVODサービスの蓄積用に160GバイトのHDDを搭載する。またAmino Communications社はNAB2007の会期中に,同社のIP STB向けソフトウエア「IntAct」を,米Intel Corp.が発表したばかりのデジタル民生機器向けSoC「Intel CE 2110 Media Processor」にポーティングする計画であることを明らかにした。
携帯電話機向けWWWブラウザーなどを開発する韓国Infraware Inc.は,IP STBなどに向けたソフトウエア「Polaris TV Suite」を公開した。WWWブラウザーやJava仮想マシン,各種のデータ放送規格に対応した受信機能,VODサービスやIPTVサービスの受信機能などを備えるソフトウエアである。WWWブラウザー用のxHTMLやECMAScriptのレンダリング・エンジンをGUIに利用し,映像を表示している画面にオーバーレイ表示できるようにした(図3,図4)。WWWブラウザーはパソコン用のWWWサイトを表示できる,いわゆる「フルブラウザー」であり,映像コンテンツの詳細を表示している画面から関連するWWWサイトにすぐに遷移できる。
米Hillcrest Laboratories, Inc.は,直径150mmほどのリング型のコントローラを操作に使うIP STBの試作機を見せた(図5)。コントローラは3軸加速度センサを内蔵するほか,2個のボタンと1個のスクロール用ホイールを備える(図6)。操作者がリング型コントローラを上下左右に動かすことで,画面上のカーソルの位置を操作できるというものだ。VODサービスで提供されるコンテンツの数が増えたり,消費者が蓄積する写真データや楽曲データなどの数が増えたりすることを想定し,ストレスなく各種の操作を実現できるようにしたいと考えたとする(図7)。同社はテレビやSTBに向けたソフトウエアや要素技術を開発する企業であり,今回見せた試作機を自ら製造する計画はないという。
このほか,会場の至るところで目に付いたのが,米Microsoft Corp.のIPTV向けソフトウエア・プラットフォームである「Microsoft TV Internet Protocol Television (IPTV) Edition」に対応するIP STBである。Microsoft社のブースだけでなく,米Cisco Systems, Inc.傘下の米Scientific-Atlanta, Inc.(図8)や米Hewlett-Packard Co.(図9)などがMicrosoft IPTVを採用したIP STBを展示していた。