2011年の地上アナログ放送終了後に空くVHF/UHFの周波数帯について,放送用途への利用を検討しているアドホック・グループは,改めて「VHFローバンドの18MHzと,VHFハイバンドの中から17MHz」を放送用に使っていくという従来通りの方針を確認した。2007年4月12日に情報通信審議会情報通信技術分科会「電波有効利用方策委員会」VHF/UHF帯電波有効利用作業班 放送グループの第3回会合が開催された。今回の会合の焦点の一つがVHFローバンド(1,2,3チャンネル)の扱いだった。いわゆる「VHFローバンド問題である」

 VHFローバンド問題が表面化したのは,2007年3月28日に開催されたVHF/UHF帯電波有効利用作業班の審議の場である。ここで,ソフトバンクモバイル 副社長の松本徹三氏が「ここで検討されている新しい放送サービスの多くは,ケータイ向けを想定している。しかし,ローバンドではアンテナ長が長くなり,事業化が困難」と強く主張,改めて放送グループの会合で検討することになった(Tech On!関連記事)。

 今回の会合でも,なぜVHFローバンドだと事業化が厳しいのかを説明する3ページにわたる資料を用意し冒頭で配布されるなど議論が紛糾することも予想される出だしだった。しかし,実際に議論が始まると松本氏は「基本的には,従来通りでかまわない」と態度を一転させた。

 松本氏は,方針を変えた理由を「VHFのハイバンドの取得競争が過熱する一方で,ローバンドが効率的に利用されないことを懸念した。その懸念はとりあえず払拭された」と説明した。今日の会合では,例えばデジタル・ラジオ放送の考えとして「VHFローバンドは第2候補となる周波数帯」,FMコミュニティ放送のグループの考えとして「要求バンドは90~108MHzとし,より有効な電波利用を希望」とする資料が提出された。放送グループの中からローバンドの利用を是認あるいは希望する用途があることから,方針を改めたようだ。

もう一つの焦点,デジタル・ラジオは・・・

 もう一つの焦点は,既に実用化試験放送が始まり,端末も出荷されているデジタル・ラジオ放送の扱いである。デジタル・ラジオのグループは,VHFローバンドの第2の候補としているものの,現行の実用化試験放送で利用している第7チャンネルの周波数を,2011年以降も放送用に確保することを求めている。今日の議論では,「VHFの周波数を分け合う自営グループ(防災対策などの公共業務といった用途に向けた無線システム)との議論では,周波数の有効利用の観点を優先する」「仮に7チャンネルの周波数を放送用に確保できない場合は,移行に向けた一定の暫定期間を設けることを求める」という方向となった。