「Wiiリモコン」でプレゼン画面を操作する宮本氏
「Wiiリモコン」でプレゼン画面を操作する宮本氏
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 「かつての私の考えは完全に逆だった。ハードウエアの急速な進化に伴いグラフィックス描画性能などが高まったことが,ゲーム自体の楽しさを損なっていた」。任天堂 代表取締役専務の宮本茂氏は,こうした状況を克服したいという思いから「Wii」が生まれたというメッセージを,米国サンフランシスコで開催中の「Game Developers Conference 2007」(GDC)における基調講演で伝えた。ユーザー層を拡大するために,Wiiでは単純さを強調することに決めたという。

 宮本氏の講演は,同じGDCで前日にソニー・コンピュータエンタテインメントが行った「プレイステーション3(PS3)」のグラフィックス描画性能をアピールする基調講演と対象的だった(Tech-On!関連記事)。それはステージの演出にも現れていた。SCEの基調講演では,舞台にPS3向けのゲームに登場するさまざまな要素を並べて飾り立てていた。一方,任天堂の基調講演の舞台には,通訳者が使うマイク・スタンドとプレゼンテーションを表示するディスプレイしかなかった。

「20年間待っていた」

 単純さを追求することによって実現できた機能の例として,宮本氏はユーザーの分身を設定する機能「Mii」を挙げた。宮本氏はこうしたコンセプトを20年前に発想したという。具体的には「Nintendo Entertainment System」向けに,人の顔をアニメーション表示できるゲームを試作した。ところが,ゲームの目的がはっきりしていなかったため,社内に反対する意見が多かったという。しかし,宮本氏はあきらめずにアイデアを温め続け, 2003年に「ゲームキューブ」向けに「Stage Debut」と呼ぶゲームを開発した。このゲームそのものは発売されなかったが,ユーザーの顔写真から,舞台で踊る3次元キャラクタを生成する機能として採用されたという。一連の技術は,Miiによってようやく日の目をみた。

 前日の基調講演でSCEはPS3の普及に向けたコミュニティの活用を強調したが,宮本氏も任天堂がコミュニティ機能に注目していることを示した。その例として,Wiiの「Miiチャンネル」で,各ユーザーが作成したMiiを公開できるようにし,他のユーザーが評価する機能を導入する予定を明らかにした。

NES向けに開発した顔のアニメーションを設定するゲーム
NES向けに開発した顔のアニメーションを設定するゲーム
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上記の発想を進化させた「Stage Debut」の画面
上記の発想を進化させた「Stage Debut」の画面
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Miiを設定する様子
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