Analog Devices社のDoug Grant氏
Analog Devices社のDoug Grant氏
[画像のクリックで拡大表示]

 米Analog Devices,Inc.は,携帯電話機用チップ「Othello」シリーズの第3世代品「Othello-3」を発表した(発表資料)。3GSM World Congress 2007の開催に合わせて発表したもの。

いよいよOthelloもCMOSへ

 Othelloシリーズは,RF回路アーキテクチャに大きな変革をもたらしたダイレクト・コンバージョン技術を,当初から積極的に導入したチップとして知られる。前世代のOthelloでは,ダイレクト・コンバージョンによりIF(中間周波数)段を不要にし,IF帯用SAWフィルタを削減できることをうたっていた。今回発表されたOthello-3では,内蔵するアンプやミキサのリニアリティを大幅に改善したことで,外付けSAWフィルタの使用数もさらに削減できるという。「内部で構成するアンプのリニアリティが10dB以上高まっている。これにより送信側も受信側も,SAWフィルタが不要になる」(Analog Devices社RF and Wireless Systems Business Unit,Director of Business DevelopmentのDoug Grant氏)。なお同社は,今回導入した新しいRF回路の設計手法について,2007年2月11日から米国サンフランシスコ市で開催された「ISSCC 2007」で発表している。

 製造プロセスに,これまでのバイポーラ-CMOSではなくCMOS技術を採用し,2チップ構成から1チップにした。Analog Devices社はRFチップへのCMOS技術の導入に懐疑的な立場を採っていた時期もあったが,「CMOS技術を使うと,バイポーラ-CMOS技術に比べて10~15%程度低コストで製造できる可能性がある。さらに将来のデジタル・ベースバンドICとの1チップ化にも向く。これらを考慮し,CMOS技術を採用することにした。CMOS技術の採用は,Othelloにとっては大きな転換だ。しかし当社は既に多くのRF系LSIでCMOS技術を採用しており,特別なことではない」(Analog Devices社のGrant氏)という。

 チップの型番は「AD6551」。6mm角で40端子のパッケージに封止する。既にサンプル出荷を開始している。なおAnalog Devices社はこのほか3GSM World Congress 2007に開催にあわせ,GSM/GPRS向けの2種類のベースバンドICも発表している(発表資料)。