モバイルビジネス研究会の第3回会合が2007年2月15日,総務省で開かれた。同研究会は,「モバイルビジネスの成長を通じた経済活性化や利用者利益の向上を図る」目的で総務省が主催しているもので,2007年1月より開催されている(総務省の開催発表ページ)

 第2回から第5回までは端末メーカーの業界団体や移動体通信事業者,コンテンツ・メーカーなどが見解を発表し,それについて出席者が意見を交換する形式で進行する。第2回でNTTドコモとソフトバンクモバイルが,今回はKDDIがプレゼンテーションを行っており,携帯電話事業者(キャリア)3社の見解が出そろった。


会合の様子

 同研究会で最大の論点になっているのは,販売奨励金モデルとSIM(subscriber identity module)ロックの是非である。大学教授やアナリストで構成される研究会メンバーはこの2つを廃止する方向で意見を述べ,キャリアは3社とも廃止には否定的な見方を示している。

 日本では,端末の販売価格の一部をキャリアが販売代理店に支払うことで負担し,ユーザーの端末購買を促進している。この奨励金をユーザーの利用料金から回収するビジネス・モデルであるため,ユーザーが短期で解約するとキャリアとしては採算がとれない。研究会側は,この仕組みがさまざまな問題を生んでいると指摘する。例えば,現状では,1台の端末を長く使うユーザーが,短期で端末を買い替えるユーザーへの販売奨励金を実質的に負担しているような不公平感があるという。

 この販売奨励金モデルと不可分の関係にあるのが「SIMロック」だ。SIMロックとは,特定キャリアのSIMカード(通信に必要なICカード)しか認識しない端末仕様のこと。ロックをかけない場合,ユーザーは,本来は高価な端末をキャリアの販売奨励金により安く買って複数台を所有し,1枚のSIMカードを挿し替えて使うといった行為が可能になり,現行の販売奨励金モデルは成り立たなくなる。

KDDI「利用期間と組み合わせるなら…」

 討議はこれまで,平行線をたどっていた。研究会側は販売奨励金モデルからの脱却を唱え,オブザーバとして招かれたキャリア側は脱却が難しいことを訴える状況が続いた。

 しかし今回は,議論に前進があった。「例えば,ユーザー契約時に利用継続期間を定め,それに応じて端末価格や料金プランを設定する販売方法ならば,SIMロック解除を現実的に考えられる。ただ,そうした販売方法を販売代理店に課すことは独占禁止法に抵触するのではないか」というKDDIの意見に対し,研究会メンバーが「独禁法違反には当たらないはず」との見解を示した。着地点と呼べそうなものが見つかったと言えそうだ。

端末メーカーも解除に難色

 今日の会合で,端末メーカーを中心とした業界団体である情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)は,「奨励金モデルを撤廃すれば端末市場の冷え込みが予測される」として,SIMロック解除には否定的な見解を示した。一方,コンテンツ・メーカーのインデックス・ホールディングスは,「国境のないネットワークの世界で鎖国を続けることは不可能」とし,SIMロック解除に肯定的な考えを発表した。

 次回会合は2007年3月19日。同研究会では,2007年夏には,販売奨励金モデルやSIMロックなどに関して結論を出すとしている。