電子情報技術産業協会(JEITA)が,IT投資に関する日米の比較調査の結果を発表した(発表資料)。それによると,2005年の日本のIT投資額は約11兆7000億円で,米国の市場規模は45兆7000億円。米国のIT市場規模は日本の約3.92倍であるという。両国のIT投資額のGDPに対する割合を見ても,日本は2.3%,米国は3.4%と約1.5倍の差がある。日本のIT投資額は米国に次いで世界第2位であるが,GDPに対する割合は,英国,ドイツ,フランスよりも低いという。

 この原因をJEITAは次のように分析する。一つは,経営や現場におけるITの位置づけの違い。米国ではITを新製品の開発や新規顧客の開拓ツールとして効果的に活用する傾向にあるのに対し,日本ではITをコスト削減のツールとして位置づける傾向にあるという。「経営課題に対する最重要施策は何か」という問いへの回答にそれが窺える。米国企業では,ITの活用を最重要施策の2位に位置づけるが,日本では5位となった。日本では,ITを経営戦略遂行のためのツールとして積極的に活用するまでにいたっていない,とJEITAはいう。

 また,米国の企業は株主から高収益を継続的に求められるため,特に景気回復期において新製品の開発や新規顧客の開拓を積極的に行う。その際に活用されるのがITツールである。株主からの収益追求のプレッシャーというこの環境の違いが,IT投資額の差につながるという。

 JEITAはCIOの位置づけや組織文化の違いも要因に挙げる。米国では,ITの責任者であるCIOを経営陣の一人に置き,その効果についてアカウンタビリティを持たせる。調査結果からも,米国では64.7%の企業が専任のCIOを置いていると答えた。一方,日本では専任,兼任を合わせてもCIOが存在する企業は21.7%にとどまり,60.9%の企業が「CIO以外でIT投資の意思決定に関わる役員・責任者が存在する」と答えた。これは,経理や事務担当の役員が責任範囲の一部として情報システム部門をマネジメントしているケースが多いことに起因するという。加えて,米国企業ではERPパッケージを導入し,業務をERPパッケージに合わせる組織文化が日本に比べて強いという。JEITAは,このようなCIOの位置づけやITと組織文化との親和性の違いも要因の一つとする。