H.264対応映像処理LSI 「MB86H50」
H.264対応映像処理LSI 「MB86H50」
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H.264のプロファイルの違い
H.264のプロファイルの違い
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MB86H50を搭載する富士通製の映像伝送装置「IP-9500」
MB86H50を搭載する富士通製の映像伝送装置「IP-9500」
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 富士通は,H.264/MPEG-4 AVC(以下,H.264)に基づく映像処理LSI「MB86H50」を開発した。H.264のハイ・プロファイル/レベル4に対応する「業界初」(同社)のLSIである。電源電圧+1.2Vで符号化の場合に消費電力が標準600mWと小さいのが特徴である。「MPEG-2の約1/3のビットレートでMPEG-2と同等の画質を実現でき,処理遅延もMPEG-2より小さい」(富士通)。同社は,H.264が今後,MPEG-2やMPEG-4に代わって主流になるとみる。

 すでに2006年12月に発売予定の同社製映像伝送装置「IP-9500」で採用している。2007年3月に外販を始める。サンプル価格は1個1万5000円である。

 同社は2005年11月にH.264のメイン・プロファイル/レベル3に対応したIPコアの開発を発表している(関連記事)。メイン・プロファイルは,デジタル・カメラやパソコン・テレビなど比較的小型の機器を想定して作られた仕様である。

 一方,今回のLSIが対応したハイ・プロファイルは,メイン・プロファイルに8×8のDCT(離散コサイン変換)処理などが加わったものである。「放送事業者や通信事業者によるIPネットワークへのデジタル放送の再配信用機器,デジタル・テレビ,次世代DVDレコーダやセットトップ・ボックス(STB)など」(同社)がこのプロファイルの主な対象機器になる。

 MB86H50は画素数1440×1080iなどに対応する。符号化データ速度は最大20Mビット/秒である。256MビットのFCRAM(fast cycle RAM)を2個パッケージ内に収めたSiPという点も業界初だという。動作周波数は108MHz。メモリは135MHzである。設計ルールには90nmを用いた。パッケージの寸法は,15mm角である。「動き検索アルゴリズム」など富士通独自の処理量の低減技術で,「H.264の策定当時にMPEG-2の10倍とされた処理量を2倍にまで押さえ込んだ」(同社)という。

 同社は1920×1080画素のいわゆるフルHDに対応するLSIも2007年中の出荷を目指して開発中で,そこでは65nmルールを採用することを検討している。