NECエレクトロニクスのマイコンを実装した評価用ボード(開発プラットフォーム)
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USBメモリ型の開発プラットフォームもある
USBメモリ型の開発プラットフォームもある
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台湾UBECのRFトランシーバIC
台湾UBECのRFトランシーバIC
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 NECがいよいよZigBee向け製品の市場開拓に本腰を入れ始めた。NECエレクトロニクスと,無線ネットワーク開発企業であるスカイリー・ネットワークス(以下,スカイリー)は2006年11月2日,ZigBeeネットワークを構築するためのソフトウエア開発キット「ZigBee SDK」を発表した。多数のデバイスを数珠つなぎにしてデータを伝送する用途や,センサー・ネットワークなどに向ける。2006年第4四半期(2007年1月~3月)から販売を開始する予定で,2010年までに1000ライセンスの販売を目指す。

低消費電力に強み


 NECは以前から同社のフラッシュ内蔵マイコンとZigBee用送受信IC(RFトランシーバIC)を組み合わせて営業活動を進めていた。しかし,これまではZigBeeの研究用途が中心だった。それが最近,ユーザーからのニーズが具体的になってきたという。「以前は,研究機関が情報収集として購入していた感がある。しかしここへきて,ガス・メーターの点検作業やビル内の機器管理など,ニーズが具体的になってきた。1000端末をつなげたネットワークを構築したいというユーザーもいる。いずれも,弊社のマイコンのユーザーが中心である。やっと本当の使い道が見えてきた」(NECエレクトロニクス 第四システム事業本部 汎用マイコンシステム事業部の技術者)。NECは,同社のマイコン事業の強化策としてネットワーク機能の取り込みを積極化させており,今回のZigBeeへの対応もその一環である。同社のマイコンのユーザーを中心に,売込みを図っていく考えだ。
 
 ZigBee SDKは,ZigBeeのプロトコル・スタック・ソフトウエアと,ソフトウエア開発ツールで構成する。NECエレクトロニクスの8ビット/16ビット/32ビットのフラッシュ内蔵マイコン(78K0,78K0R,V850ES)を使ったソフトウエア開発環境を実現する。RFトランシーバICには,台湾Uniband Electronics Corp.(UBEC)の「UZ2400」を使っている。「UZ2400は動作時の消費電流が20mA程度と,業界最小級だった。このほか,EVMが利用周波数帯域内で安定している点も評価ポイントだった」(NECエレクトロニクス)。

 プロトコル・スタック・ソフトウエアは,NECとスカイリーが共同開発した。メッシュ・ネットワークを実現するためには,接続するノード数にあわせてルーティング・テーブルやメモリ・サイズの最適化を図る必要があるが,こうした実装面はZigBeeの仕様に記述されていない面も多い。スカイリーはピア・ツー・ピア型のメッシュ・ネットワーク・ソフトウエアを独自に開発しており,設計ノウハウを持っていることから,最適なソフトウエア作りが可能になったと説明する。また消費電力の点でも優位性があるという。「以前もセンサ・ネット端末のソフトを手がけたことはあるが,チップの詳細な情報を得ることが難しく,低消費電力化に向けたソフトウエアの最適化が難しかった。しかし今回はNECエレクトロニクスと協業することで,チップの詳細なデータを得られたことから,より深いディープ・スタンバイなど,待機時モードの設定を事細かに用意でき,消費電力を低減できた。ここまで最適化できたのは今回が初めて」(スカイリー・ネットワークス 代表取締役 CEO/CAの梅田英和氏)。

 SDKにあわせて, ZigBee用チップを実装した評価用ボード(開発プラットフォーム)も別に提供する。ZigBee SDKの価格は12万円で,評価用ボードは1万5000円から。

 ZigBeeは半径数十mの距離で最大250kビット/秒のデータ通信が可能な規格。複数の端末がサーバ機を介さずに網目状のトポロジで通信を行う「メッシュ・ネットワーク」機能を備える。既に正式仕様「Version 1.0」が発行され,対応デバイスが市場投入されている。ただし,2007年初頭から拡張版仕様の「Enhanced ZigBee Standard」が発行される予定であり,今後はこちらが主流になるとみられている。このためNECらのSDKの販売はこの仕様が発行された後になる予定。