開会式の様子。中国らしく軍服を着た人物も登壇していた。
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2006年10月21日まで中国・蘇州市で開催されていた「eMEX China」（中国蘇州電子信息博覧会）を訪れた。上海から西に80km，クルマで2時間離れた蘇州市はもともと，春秋戦国時代に呉の都だった町。蘇州市とその近郊は現在，深セン市近郊に次ぐ電機産業の集積地になっている。
eMEX Chinaは，電機関連の展示会として中国で最大規模といわれているが，出展者数は518と他地域の展示会に比べて少ない。例えば「Hong Kong Electronics Fair (Autumn Edition)」は3010（併設展示会を含む），「COMPUTEX TAIPEI」は1312，「CEATEC」は807である。eMEX Chinaの会場を歩いた感覚では，展示スペースはCEATECの半分に満たなかった。
規模が小さい一因に，Hong Kong Electronics Fairなどのように，世界中からバイヤーを集めることを主目的にしていないことがある。出展者で大きなブースを構えているのは，蘇州に進出した外資系企業である。こうした企業は自発的に，あるいは地方政府の要請に基づいて出展し，中国国内での部材調達や販売網の拡充を狙っていた。
これも中国らしい風景。開会式の最後に花火（紙吹雪付き爆竹）が炸裂した。
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会場入り口のすぐそばに台湾系のAsustek社とBenQ社，その後ろには韓国Samsung Electronics社がブースを構えていた。深セン近郊以上に蘇州近郊の経済発展は，台湾を中心とした外資系企業が支えている。中でもこ3社は，雇用の創出などの面で貢献が大きい。なおeMEXの開催には，Taipei Computer Association(TCA)が協力している。
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BenQ社は，EVDプレーヤーで再生したHDTV映像を液晶テレビに映していた。EVDは中国独自の光ディスク規格で，片面2層8.5GバイトのDVD媒体に，HDTV映像を50〜105分格納する。2003年12月からEVD対応製品の販売が始まっている。ただし，BenQ社はEVDプレーヤーそのものを展示しなかった。理由を聞いたところ「まだ市場が立ち上がっていないから」とのこと。BenQ社はコスト競争力を高めようと，2000年ころから蘇州工場で液晶テレビを生産している。同社の1製品「DV3750」の実勢価格は9599元（約14万40000円）。
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BenQ社は外観デザインの向上に非常に熱心である。同社 Chairman & CEOのK.Y. Lee氏は，「今もこれからも外観デザインにはこだわる。特に重要なのは将来。どんなハイテク商品でもいずれは洋服のようなコモディティになるからだ」と2年前のインタビューで語っていた。
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中国や台湾の展示会では，モノを配っているところに必ず長蛇の列ができる。
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台湾Quanta（廣達電脳）社やAsustek社のブースには，目ぼしい展示がなかった。両社のパソコン業界における影響力から考えると意外だが，OEM/ODMの受託を主力事業にしているためだろう。
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蘇州市に半導体の後工程の工場を置くSamsung Electronics社は，SiP関連の展示が多かった。
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韓国Reigncom社の音楽プレーヤー「S10」は，Samsung Electronics社のSiPを採用。SiPはフラッシュ・メモリを積層したものとみられる。
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携帯電話機のメイン・ディスプレイに向けたシリアル・インタフェースを開発。18本の配線が4本に減るほか，輝度が向上し，消費電力が2〜3割減るという（Samsung Electronics社）。
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商品化したばかりの半導体ディスク装置を展示（Samsung Electronics社）。
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携帯電話機で急速に普及しているSiPの1手法「POP」も手掛けている（Samsung Electronics社）。
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30型で画素数が2560×1600の液晶パネル・モジュールを展示。2006年9月から量産を始めた。「今は中国で大量に売れる商品ではないが，医療機関やデザイナーの需要を確実に取り込みたい」（説明員）。Samsung Electronics社は今後，蘇州工場でテレビ向け液晶パネル・モジュールの製造を始めることを検討している。
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日本企業が強いというイメージがあるフレキシブル基板市場だが，台湾Ya Hsin Industrial（雅新実業）社は，中国・華東地域の同市場で，実に7割のシェアを獲得しているという。
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Ya Hsin社は，「プレイステーション 2」用メイン・ボード（リジット基板）を製造し，ソニーの関連企業やAsustek社に納入してきたという。
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中国China Mobile Communications（中国移動通信）社は，数年後の商用化を目指し携帯電話網を使ったカーナビ・サービスを研究している。エアコンやヘッド・ライトの遠隔操作や，無線タグを使った料金徴収サービスを実現したいという。「道路建設が急速に進む中国では通信による情報更新が必須」（説明員）。デモではEDGE方式の携帯電話網を用いていたが，TD-SCDMA方式，W-CDMA方式，CDMA2000のいずれかの免許が中国で交付され次第，こちらを研究の前提にする考え。同免許は2007年中に中国政府が発行する見込みという。「日本のカーナビに学びたい」（説明員）。
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中国Jiangsu Shinco Electronics（新科）社は，自社で設計・製造したカーナビをずらりと並べた。同社は「中国に6社ある大手カーナビ・メーカーの1つ」（説明員）という。ここでいう6社には台湾系企業を少なくとも3社含む。実勢価格は中央の「GD70C」が7380元（約11万円），左上の「GM702C」が6380元（約9.6万円），左下の「GM701C」が5680元（約8.5万円），右上の「GM410C」が4580元（約6.9万円），右下の「GM350C」が3580（約5.4万円）。いずれも中国の平均所得から考えれば高価だが，同社のカーナビ事業は「急成長している。ここ1〜2年で富裕層に買い始めた」（説明員）。左上のGM702Cは7型の液晶パネルを搭載し，SDメモリーカードを介して音楽や動画を再生できる。OSはWindows CE.。
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ルネサス テクノロジは，電動スクーターに自社の8ビット・マイコン「R8C/Tiny」が搭載されていることをアピールしていた。蘇州市の政策によって電動スクーターは，ちょっと屋外に出れば何十台と必ず目にするほど普及している。蘇州市では一般に，一番歩道よりの車線を，自転車や電動自転車，電動スクーターに割り当てている。「2007年以降，排気ガスの規制が厳しくなることも普及を後押ししている」（説明員）。電動スクータの価格は，最も安くて2000元（約3万円）ほど。8ビット・マイコンの販売単価は「安いが，大量に出るので十分ビジネスになる」（説明員）。
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R8C/Tinyの展示パネル
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台湾A-DATA Techonology（威剛科技）社は，米The Walt Disney社のキャラクターをあしらったUSBメモリーを積極的にアピールしていた。「Disney社のキャラクターは，これまで当社が手掛けてきたハローキティなどと比べると使用権が高いし，幅広い年齢層に受け入れられるキャラクターでもない。それでもDisney社のキャラクターを使うのは，女性という巨大な市場を逃さないためだ。キャラクター商品が生み出す『かわいい』は唯一無二の特徴になる。単純な価格競争に巻き込まれない」（説明員）。
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台湾系の中国Shanghai Microtek Technology（中晶科技）社は，2000年に北京故宮博物院に納めたスキャナを見せていた。同社は中国市場で35〜40％のシェアを持つトップ企業という。
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日系セット・メーカーで出展していたのはキヤノンだけだった。地方政府の要請に応えて出展したという。同社は複写機「iR」シリーズを蘇州市で製造し，全世界に向けて出荷している。
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日立ディスプレイズは，「Nintendo DS Lite」向けに液晶パネルを供給していることをアピール。DS Liteは「日本ほどではないが中国でも人気がある」（説明員）ため，来場者の関心を集めていた。
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