TDKは,超磁歪素子を使ったスピーカーを用いた2.1チャネル・サラウンド・システムを開発し,「CEATEC JAPAN 2006」に出展した。右チャネル用と左チャネル用の中高音向けスピーカーは,透明のアクリル平面板を超磁歪素子を利用して振動させて,音を発生させている。通常のスピーカーが前面方向に音場が広がるのに対し,今回はスピーカー周囲で音圧がほぼ均一な音場を形成できる。このため,リア・スピーカーを加える5.1チャネルのサラウンド・システムに近い音場を,今回の2.1チャネルでも得ることが可能という。前面スピーカーだけで立体的に音を聞かせる擬似サラウンド機能も搭載しているが,同機能を使わずとも十分なサラウンド感を得られるとする。2006年度中に発売する予定。システムの価格は,5万円以下を想定している。これまでも同社はCEATECなどで超磁歪素子によるスピーカーを参考出展してきた。

 アクリル平面版は,超磁歪素子を搭載したエキサイタで振動させる。超磁歪素子は,数Vの電圧印加で伸び縮みし,しかも伸縮時に発生する力は20kg相当もある。振動させるアクリル板の厚さは3mm。この程度の厚さがあるとアクリル板の強度が高く,アクリル板の表面上に微細な振動領域が多数作れるという。数多く作り出した振動領域によって,スピーカー前後での位相差がなくなり,広い音場を生む。通常のスピーカーに使うような磁石は発生する力が数百gと弱いため,強度が高い振動板上に微細な振動領域を作ることはできないとする。

【申し入れ】 記事掲載当初,システムの価格は「2万5000円から3万円を想定している」としましたが,TDKから「価格については検討を進めている最中である。5万円以下で販売したいと考えている」との申し入れがありました。この申し入れを受け,記事においてシステム価格を5万円以下に修正いたしました。

図1 2.1チャネル・サラウンド・システム
図1 2.1チャネル・サラウンド・システム
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図2 左側が超磁歪素子,右側が超磁歪素子を収めるエキサイタ
図2 左側が超磁歪素子,右側が超磁歪素子を収めるエキサイタ
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