米Sony Electronics Inc.や米Panasonic Corp.,米Dell Inc.,米AT&T Inc.などを含む37のエレクトロニクス・通信関係企業や業界団体は,WIPO(世界知的所有権機関:World Intellectual Property Organization)が提案した放送向けの新しい国際条約「Treaty on the Protection of Broadcasting Organizations」(Broadcast Treaty)の草案に反対の声明を公開した(PDF形式の文書)。「テレビ/ラジオ放送事業者に今までなかった知的財産権を提供することになる」「新しいデジタル家電製品やサービス開発を阻害する」「ISP(internet service provider)などのネットワーク企業に,放送事業者の権利侵害に対する責任に与える可能性が十分ある」などと主張している。WIPOは2006年9月11日の週にスイス・ジュネーブ市でBroadcast Treatyを議論する会議を開く。今回の声明は,この会議に参加する米国政府の代表団にアピールするためのものである。
 
 WIPOは,2005年9月26日~10月5日間に開催した会議で,Broadcast Treatyを正式な条約にするための作業を開始した。同条約を反対する陣営の主張によると,Broadcast Treatyの主な目的の一つに,「地上放送やケーブルテレビなどの放送信号を受信して,勝手にインターネットの再配信するといった行為を止める」ことになる。しかし,Broadcast Treatyの草案によると,「コンテンツの著作権の有無に関わらず,放送したコンテンツに関連する新たな知的財産権を50年間にわたり付与する」という。これに対して,米大手電話事業者Verizon Communications Inc.のAssociate General Counsel兼Vice PresidentであるSusan Deutsch氏は「我々はブロードバンドを使い,米国内においてテレビ放送サービスを提供する放送事業者でもあり,この条約の提案が実現すれば利点はある。しかし,こうした利点と比べて,Broadcast Treatyの意図しない結果から発生する問題点が重要」という考えから,反対する立場にたったという。

 
 反対陣営は,放送事業者に新しい権利を与えるの上に,放送に暗号や他の保護技術に関する権利も定めることを懸念している。こうした権利を与えると,家庭内ネットワークにおける信号を,放送事業者がコントロールできるの恐れがあると主張する。この結果,新しいブロードバンド・サービスやネットワーク家電の開発の制限に繋がる心配があると指摘する。