講演する日産自動車の久村氏
講演する日産自動車の久村氏
[画像のクリックで拡大表示]

 「クルマは最先端の半導体を使うことになる」――。
 2006年9月7~8日に開催されている「2006 東京国際デジタル会議」(日経BP社の日経ビジネスと日経エレクトロニクスが共催)で登壇した日産自動車 執行役員 総合研究所長の久村春芳氏は,「クルマのIT化はここまで進む」とのテーマで講演を行った。

 自動車分野は今後,ITSとIT分野でますますデジタル化が進展するとし,「これまでクルマに採用する半導体は,民生機器で利用された古いものとの認識があるが,2015年ころにはクルマで最先端の半導体を使っているはず」との見解を示した。

 具体的にはITSの分野は,交通事故防止に向けた取り組みを重点的に進めていくという。これまで自動車単体で進めていた安全性の確保だけでなく,歩行者や交差点の死角にいる車両など運転者から見えない相手への対応を強化するため,無線通信を使ったインフラ協調型の安全システムが必要になるとしている。

 IT分野では,クルマの走行履歴をリアルタイムで無線通信を使って収集し,VICSが設置されていない道路でも交通状況を把握できるシステムを構築し,渋滞緩和を目指したいとした。渋滞を緩和できることで,目的地までの到着時間が削減されるほか,CO2の排出量も削減できるとみている。

 日産自動車では,こうしたITS,IT分野を進展させるために現在,神奈川県で「SKY Project」と呼ぶ実証試験を開始しており,2010年までに実用化したいとしている。

 さらに,将来的にはすべてのデジタル技術がクルマというプラットフォームに搭載され,「まるでロボットが運転をサポートしてくれるようになっているだろう」と語った。

 具体的なサービスとしては,ドライブスルー・サービスの進化や,安全運転をポイント化する「Good manner driving」の例を示した。ドライブスルー・サービスについては,現在の店先で注文して商品を受け取るシステムから,事前にクルマの中で注文し,店先では商品を待ち時間なしに受け取れるようにするというもの。

 Good manner drivingは,他社に道を譲った車両に対してポイントを付与し,そのポイントに応じて特典が受けられるというもの。日産自動車は,どのサービスを実現するにも今後,半導体業界やIT業界などとの連携が必須であり,お互いにWin-Winの関係になれるビジネス・モデルをともに築きたいとしている。