図◎「780MPa級GAハイテン」を使用した「MRワゴン」のリアフロア・クロスメンバ
図◎「780MPa級GAハイテン」を使用した「MRワゴン」のリアフロア・クロスメンバ
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 JFEスチールは,自動車構造骨格部品向けにプレス成形性に優れた1180MPa級高強度冷延鋼板「高加工性WQハイテン」シリーズを開発した。新ハイテンの延性は従来の1180MPa級ハイテン材の1.5倍以上,一般の980MPa級ハイテン並み,穴拡げ性は一般の980MPa級ハイテン並み。これにより開発済みの780MPa級,980MPa級に次いで,同シリーズには新たなラインナップが追加されたことになる。

 1180MPa級ハイテンは既に,ロール成形などの曲げ加工を主体にしたバンパや補強部品などに使用されているが,より高度なプレス加工成形を必要とするキャビン周りの構造骨格部品などに適用するには絞り成形性が不足していた。そこで同社は独自のWQ(水焼入れ)方式連続焼鈍プロセス「JFE-CAL」を活用し,金属組織を最適に制御することで優れた延性と伸びフランジ性を兼ね備えるハイテンの開発に成功した。

 新ハイテンは優れたプレス成形性に加えて,(1)WQ方式を利用した低炭素当量設計で,遅れ破壊特性や溶接性に優れる(2)プレス成形時の高い加工硬化と塗装焼き付け時の大幅な強度上昇により,ホットプレス部品の代替が可能になる──といった特徴を持つ。

 さらに同社は,スズキが2006年1月に発売した「MRワゴン」の構造部に「780MPa級GAハイテン」が初めて採用されたことを明らかにした(図)。スズキと共同で開発したこのハイテンは,従来比2倍以上の優れたプレス成形性を実現したもの。具体的には,延性と穴拡げ性のバランスに配慮しながら従来比2倍以上の高い穴拡げ性を持たせ,成形時のプレス割れの主原因となるせん断端面からの亀裂発生を最小限に抑える。

 同社によれば,このハイテンは270MPa級鋼板を使っていた大型部材に適用可能。その場合には,補強部材が不要となり,構造部材の軽量化,プレス型費や組み立て工数の削減に貢献する。実際,スズキのケースでは,270MPa級鋼板を使用したときと比べて25%の軽量化を実現していると明かす。