発表会では,専用のノートに書いた内容がパソコンの画面に反映されることを実演した。手に持っているのがデジタルペン。
発表会では,専用のノートに書いた内容がパソコンの画面に反映されることを実演した。手に持っているのがデジタルペン。
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実験データのグラフなども管理できる
実験データのグラフなども管理できる
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専用ノートには0.3mm間隔の格子点が並ぶ
専用ノートには0.3mm間隔の格子点が並ぶ
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 日立製作所は,記録内容を電子化する「デジタルペン」と電子署名技術を融合して,研究ノートを電子的に管理するシステムを開発した。研究者のアイデアの独自性や実験データの正当性を証明するといった用途に向ける。既に日立製作所の研究者30人が利用しており,使い勝手は良好だという。

 デジタルペンはスウェーデンAnoto社の技術を用いており,管理システムを日立製作所が開発した。専用の研究ノートには,どの紙にも0.3mm間隔の格子点が上下左右に配置してある。格子パターンはページによって異なり,全部で97兆通りあるため偽造は難しい。ペンに付いたCCDカメラでパターンを読み取り,筆跡や紙上の位置などを検出する。電子化した筆跡情報に電子署名や時刻などを付加して保存する。

 手書きの文字だけでなく,実験データなどのグラフも電子化できる。グラフを格子パターンとともに印刷してノートに貼った後に,デジタルペンで四隅を読み取ればグラフがノートの一部として認識される。同社は,「一般に研究ノートの約半分がグラフで埋められていることも多いので実用性がある」(説明員)と見ている。筆者や日時から探したい記録を検索することも可能だ。

 デジタルペンの事業展開は病院や水産業で始まっているが,研究ノート用の実用化は未定という。今後は課題の抽出と改良を重ねて,実用化に近づけていく。デジタルペンの価格は3万~3万5千円。専用のノートは,日立製作所が独自に作った場合に1冊数百円強だった。同社が従来から社内で用いている研究ノートとほぼ同価であることから導入は容易とした。記者発表の場で実際に試してみると,ペンがやや大きいが書きづらいということはなかった。