「2006年度には新築住宅のうち25万戸が,リフォームする住宅のうち23万戸がオール電化になる」――。富士経済は,電力会社によるガス機器を必要としないオール電化攻勢で急変する住宅分野のエネルギー需要動向についての調査結果「エネルギー需要家別マーケット調査要覧2006 上巻:住宅分野編」をまとめた。

 住宅分野では,電力会社の本格参入により電力会社対ガス会社の様相を見せ始めたという。電力市場は2005年度から高圧分野が全面自由化となり,2007年度からは低圧・電灯を含む全面自由化の検討が開始される予定となっている。電力会社にとって住宅分野は高圧分野の需要離脱を補完する重要な位置付けであり,オール電化住宅の普及は深夜電力使用量の増加による負荷平準化にもつながることから,この分野での需要の獲得に本格的に乗り出している。

 住宅着工件数は日本の総人口の減少により年率2%程度の減少が続いているが,新築のオール電化住宅は,2005年度には単年度で22万戸,2006年度には同25万戸を突破するとみられる。新築でのオール電化住宅の比率は,2006年度には21%に達する見込みで,2015年度には全国平均で29%まで上昇すると富士経済では予測している。

 一方,既存住宅のリフォームによるオール電化への移行も進んでいる。2004年度は12万5630件だったが,2005年度には19万6700件に増加し,2006年度には23万件に達するもよう。その後も,2007年度には27万7000件,2015年には33万3000件まで増えると予測している(図1)。

 2006年度における新築に対するオール電化率を地域別でみると,北陸が約44%と最も高い。関西は都市ガスの使用率が80%と高いが,関西電力が積極的にオール電化の攻勢を進めており,2006年度にはオール電化比率が38%に達する見込みである。

 関東は2004年に起きた原子力発電所の不祥事などからオール電化への取り組みが遅れたが,最近はオール電化への本格的な施策が展開されている。特にガスの導管普及率が低く,LPGや灯油の需要が高い北関東でオール電化の傾向が顕著になっているとしている。

IH調理器は2006年に年間250万台超に


 富士経済は,オール電化に関連して住宅向けエネルギー関連機器についても調査している。ビルトイン型のIH調理器は2006年度に前年度比17%増となる年間70万台に,2015年度には同255万9000台に増加すると予測する。ヒート・ポンプを使った電気式給湯器である「エコキュート」は前年度比42%増となる2006年度に32万台,2015年度に120万台に拡大するとしている。

 このほか,蓄熱式暖房機が電力会社のオール電化推進の後押しを受けて市場が急拡大している。2006年度は前年度比20%増となる12万4000万台となる見込みで,2015年度には32万台に増加するとみている。太陽光発電については,2006年度に前年度比11%増となる28万7000万kWに,2015年度には40万7000kWに増えると予測する。

 今回の調査は,2006年5~7月に全国10地域別に住宅分野におけるエネルギー需要の市場を予測した。調査方法は,同社の専門調査員が各事業者や業界関係者など約200社を対象に聞き取り調査したほか,アンケートや文献などから調査したという。調査報告書は9万9750円で販売している。

図1 オール電化住宅の推移予測
図1 オール電化住宅の推移予測
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