図◎デュポンが開発したチタン粉末(右上)とその成形品
図◎デュポンが開発したチタン粉末(右上)とその成形品
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 デュポンは,低コストで高純度のチタニウム(Ti)粉末を得る新しい製造プロセスを開発,その概要を「人とくるまのテクノロジー展2006」(2006年5月24日~26日,パシフィコ横浜)で展示した。新しいプロセスは,原鉱石から四塩化チタン(TiCl4),二酸化チタン(TiO2)を経てチタン粉末を製造するもの。四塩化チタンからチタンスポンジを経てチタンインゴット,チタンビレットを製造する従来のルチル法に比べて,製造プロセスが簡単であること,安い原鉱石が使えることなどから,実用化すれば「チタン合金製自動車部品の大幅なコスト削減が期待できる」(同社)。

 塗料用の二酸化チタンを手掛ける同社は,実は,世界有数の四塩化チタンメーカー。新しいチタン粉末の製造プロセスは,従来からの四塩化チタンの製造プロセスに,新規開発した製造プロセスを組み合わせている。まず従来の製造プロセスでは,原鉱石と塩素,コークスから四塩化チタンを製造し,酸素を加えて二酸化チタンを得る。これは塩素法と呼ぶ方法だが,デュポンでは原鉱石に純度の低いイルメナイト鉱を使う。その結果,コストは,従来のチタン製造に使う純度の高いルチル鉱と比較して1/3以下と低い。

 続く新規の製造プロセスは「電解還元法」と呼ぶ。二酸化チタンをチタン粉末に還元すると同時に,塩素を除去し粉末の大きさを調整するが,詳細は一切明らかにしない。こうして得られる粉末は純チタンだから,自動車部品に利用されるTi-6Al-4V合金などにする場合には,アルミニウム(Al)やバナジウム(V)の粉末と混合し合金化する必要がある。部品の製造コストも「ニアネットシェイプの粉末冶金法を利用するため,低コストが見込める」(同社)。

 同社は基本的に,チタン粉末を提供することになるが,ブランク材などを求められた際には粉末冶金メーカーの協力を得て供給することも検討している。既に,今回の新しい製造方法と別の製造方法で得られたチタン粉末のサンプル出荷を開始しており,2010年の実用化を目指す。