図1 NTTが「空間電荷制御モード電気光学効果」と名づけた新しい現象
図1 NTTが「空間電荷制御モード電気光学効果」と名づけた新しい現象
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図2 従来あったスキャン角度と動作周波数のトレードオフを大きく突破
図2 従来あったスキャン角度と動作周波数のトレードオフを大きく突破
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 NTTは,これまで一般に利用されている光の方向を制御するスキャナに比べて,小型化という点でも動作速度でも2ケタ高性能な光ビームスキャナを開発したと発表した(発表資料)。光通信の分野の他,映像機器やプリンタなどに利用できる見通しであるという。

 新しいスキャナには「KTN(タンタル酸ニオブ酸カリウム)」と呼ぶ,印加電圧で屈折率が変化する「電気光学結晶」の一種を利用する。同社が2003年に開発したKTN結晶の安定的な成長技術に加えて,電流を同結晶に注入すると,それまで一様だった屈折率の値分布が注入方向に変化するという新しい性質を発見したことが今回の開発につながったという。

 この性質を利用して作製したスキャナ素子は,長さが6mmと短いにもかかわらず10度を超えるスキャン角度と約800kHzの動作周波数を持つ。これは,従来の可動ミラーを利用したスキャナに比べ,体積は1/100と小さく,動作周波数は100倍以上も高速である。

 可動ミラー型のスキャナ素子より高速で動作するスキャナは,これまででもMEMSや音響光学結晶,電気光学結晶などを利用して開発されていた。しかし,従来の技術では,スキャン角度と動作周波数との間にトレードオフがあった。高速で動作し,それでいて広角のスキャン角度を持つスキャナ素子の実現は難しかったという。

 例えば,従来最も高速で動作する電気光学結晶を用いたスキャナはスキャン角度が小さく,1度のスキャン角を得るのに+1万Vという高電圧を印加する必要があった。今回のスキャナは,同じ寸法と同じ印加電圧で比較すると従来の電気光学結晶のスキャナより,80倍もスキャン角度が広いという。