中期経営計画を説明する菊川社長
 オリンパスの2005年度決算(2005年4月~2006年3月)は,売上高が対前年度比20.2%増の9781億2700万円,営業利益が同170.0%増の625億2300万円だった(PDF形式の発表資料)。前年度は100億円を超える赤字だった当期純損益も285億6400万円の黒字に転換した。大幅な増収は医療事業の好調や,前年度下期に連結対象となったアイ・ティー・エックスの業績が2005年度は期初から加算されていることなどによる。オリンパスは,2006年度(2006年4月~2007年3月)の業績についても,売上高が1兆350億円(対前年度比5.8%増),営業利益730億円(同16.8%増)といずれも過去最高を見込んでいる。

 「2005年度の最大課題」(代表取締役社長の菊川剛氏)としていた映像事業の収益改善が進んだ。2004年度はデジタル・カメラの新製品の投入が遅れたことが主因で約240億円の赤字を出した同事業は,第3四半期(2005年10月~12月)に7四半期ぶりに黒字化すると,通期でも約48億円の営業利益を計上した(Tech-On!関連記事)

 映像事業の収益改善について同社は「上期に徹底したコスト削減を行い,下期には一眼レフ・デジタル・カメラ2機種を含む新製品を投入した。売り上げを無理に伸ばさず,収益改善に徹したことで,もくろみを上回る結果が得られた」(取締役常務執行役員コーポレートセンター長の山田秀雄氏)と説明する。デジタル・カメラの販売台数は2004年度の890万台に対して840万台にとどまり,売上高も対前年度比8%減の2289億円となったが,一眼レフ機は前年の約2倍となる25万台で,収益改善に貢献した。在庫日数が前年度末の2カ月に対して1.4カ月まで改善したことも利益を押し上げた。

 2006年度のデジタル・カメラの販売台数は880万台を目標としている。一眼レフ機の目標販売台数は40万台。年間で複数の一眼レフ機を投入するという。高価格帯を中心とする製品系列に移行することや販売台数の微増で,デジタル・カメラ事業は8%の増収を見込む。特に国内市場では37%の増収を予測している。


図●デジタル・カメラの出荷台数と台数シェアの推移(年度ベース)

 内視鏡を中心とする医療事業も2ケタの増収増益となった。売上高が対前年度比16%増の2663億円,営業利益が同17%増の766億円である。一方,前年度下期から連結対象となった子会社アイ・ティー・エックスが手掛ける情報通信事業は,売上高は2849億円でオリンパスの5つの事業分野で最大となったが,費用増などにより営業損失26億円を計上した。

デジタル・カメラは収益重視

 通期決算と同時に発表した中期経営計画では,2008年度(2008年4月~2009年3月)の業績目標として売上高1兆2000億円,営業利益1000億円を掲げた。2008年度までの3年間は毎年,450億円の設備投資と売上高の5%を超える研究開発投資を予定している。また,早期がん診断治療やナノ計測などの新規事業の開発に向けて,3年間で200億円を「戦略投資」として投じる計画だ。

 映像事業については,引き続きコスト削減を徹底する方針で,新規技術の開発よりも既存製品の改良や,既存技術の用途を拡大することに主眼を置く。経営目標としては,2008年度に売上高3000億円,営業利益120億円としている。営業利益率(目標)は同社全体の8.3%に対して4.0%と低いが,「撤退はしない。安定した収益体質を築く」(菊川社長)と強調した。


図●オリンパスの売上高と営業利益の推移(年度ベース,2006年度以降は目標値)

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