東レはこのほど,米Boeing社の次世代中型旅客機「B787」(2008年就航予定)向けの炭素繊維複合材料について,2021年までの16年間(5年間のオプションを含む)にわたる長期供給に関する包括的正式契約を同社と締結した。B787は,乗客が目的地までノンストップで移動できる「Point to Point」のコンセプトに基づき,経済性と効率を追求した旅客機。省エネルギ運航を実現するために,機体の構造材料には炭素繊維複合材料を大幅に採用している。東レは今回の契約について「当社の炭素繊維とそのプリプレグの品質優位性,長期にわたる安定した素材供給実績,そしてBoeing社と培ってきた信頼関係が評価された」としている。

 B787は,構造材質量の約50%に炭素繊維複合材料を利用する。このため,1機当たりの炭素繊維使用量は1次構造材と2次構造材を合わせて約30t。燃費効率を高めて運航コストを大幅に削減する上,居住空間の拡張や窓面積の大幅拡大,キャビン内の高湿度化など乗客の快適性を向上させることができる。現時点におけるB787の確定受注は400機近くで,オプションを含めると600機を超える。B787が月間10機生産されるとした場合,東レの契約期間内におけるプリプレグ受注額は総額60億米ドル(約7000億円)に達するとみられている。

 東レでは今回の締結に先立ち,米国における炭素繊維原糸(プリカーサ)の生産設備を新設したり,プリプレグの生産能力を倍増したりした。その結果,米国においてプリカーサからプリプレグまでの一貫生産体制を構築/増強。加えて愛媛工場で,2007年初めの稼働開始を目指し,B787向けに炭素繊維とプリプレグの新工場建設を進めている。