KDDIとKDDI研究所は,HDTVの映像信号をIP網経由で伝送する符号化/復号化装置(コーデック)「JH-3000N」を開発した(発表資料)。開発にはNHKが協力した。両社の従来品「JH‐2000」は電気通信事業者向け規格SDH(synchronous digital hierarchy)対応の伝送装置での利用を想定していたが,JH-3000NではSDH伝送網よりも安価なIP網に直接つないで使えるようにした。医療や企業内通信での利用を想定している。

JH-3000Nは,符号化/復号化方式として伝送遅延がMPEG-2よりも短いJPEG2000を採用している。輻輳などによるパケット損失やスループット低下といった通信網の品質劣化に対する耐性を高める機能を搭載しており,IP網でHDTVを安定的に伝送できるようにしたという。

耐性を高める機能には,可変符号速度機能と階層符号化機能がある。前者の可変符号速度機能では,通信品質を監視しながらパケットの送出を制御する。具体的には,受信側で検知したIP網の品質 (パケット損失) を送信側に通知,送信側は通知情報から実効速度を予測し,符号化データ速度を調整する。

 後者の階層符号化機能はJPEG2000が備えるもので,映像情報を画質の重要度によって区分しておき,通信状態が劣化したときには重要度が高い情報だけを送信するというものである。このほか,映像の種類によって短時間でパケットが大量に発生した場合にも,等間隔でパケットを送出する機能を実装している。

両社は,2006年4月24日から米ラスベガスで開催される放送関連技術の専門展示会「NAB2006」に,同製品を出展する。