表1 出力許容値の暫定案
表1 出力許容値の暫定案
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 総務省の情報通信審議会は,広帯域無線技術であるUWB(ultra wideband)の日本での出力許容値案をとりまとめた。この案は総務省が2005年10月のITU-Rの会合に提出したものをベースに,一部の周波数帯での干渉回避機能の装備に最大2008年末までの猶予期間を設けたものになっている(関連記事)。総務省は近日中に同案に対するパブリック・コメントを募集し,2006年3月末までの答申を目指す考え。早ければ,2006年初夏にもUWBシステムを搭載した製品が日本で利用可能になる見通しである。

 総務省の情報通信審議会 情報通信技術分科会は2006年1月31日,第6回めとなるUWB無線システム委員会を開催し,UWBの出力許容値に関する最終報告書案をまとめた(表1)。2005年10月の草案から大きく変わった点は,周波数が4.2GHz~4.8GHzでは,最大2008年12月31日までは干渉回避技術DAA(detect and avoid)機能を装備していなくてもUWBシステムを搭載した機器を販売できるようになった点。DAA機能が確立する前でも製品を販売できるようにするための「時限的措置」(総務省)である。

欧州では2010年6月まで猶予

 こうした措置が取れるのは,第4世代移動通信システム(4G)として割り当てが想定されている3GHz~5GHzの中で,4.2GHz~4.8GHzは具体的な利用予定がまだなく,少なくとも2010年までは4Gとして利用されないため。欧州では,同周波数帯で,DAA機能の装備義務を2010年6月30日までは課さない案が検討されている。欧州より4Gを早く導入する姿勢の日本では,猶予期間をやや縮めて2008年12月31日とした。日本が4G用としてITU-Rに提案している3.4GHz~4.2GHzに関しては,猶予措置は設けない。

 総務省によれば,「仮にDAA機能が早期に確立した場合は,2008年末を待たずにこの猶予措置を撤回する」(移動通信課)。また,2008年末までにDAA機能を持たないUWBシステムを販売した機器ベンダーは,2009年以降,それらの製品の数の低減に関して「適切な対処を行うこととする」(同)という。

 このほか,最終報告書案には,他の無線システムとの共用をはかるために,(1)屋内利用限定,(2)USBのホストとなる機器には交流電源がつながれている必要がある,(3)航空機内,船舶内などでの利用禁止や玩具への使用禁止,(4)利用密度や利用シーンなどUWBシステムの使われ方の実態が大きく変わった場合は技術的条件を見直す,(5)DAAの有効性については関係者の合意に基づく実証実験での確認が必要,(6)既存の無線システムに有害な電波干渉を与えた場合は,技術的条件を見直す,などといった条件が盛り込まれた。