図1 イタリアActa社が展示した燃料電池
図1 イタリアActa社が展示した燃料電池
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 触媒メーカーであるイタリアActa SpAは,エタノールを燃料として駆動可能な燃料電池を「第2回国際水素・燃料電池展」(2006年1月25~27日,東京ビッグサイト)に展示した(図1)。住友商事との共同展示で,ACTA社の燃料電池関連触媒は住友商事が日本・韓国・台湾での独占販売契約を締結している。

 同社の燃料電池の特徴は,プロトンが移動する陽イオン交換膜(カチオン交換膜)ではなく,陰イオン交換膜(アニオン交換膜)を用いること。アニオン交換膜にはトクヤマ製を採用した。燃料極側でC2H5OH + 12OH → 2CO2 + 9H2O + 12e-,空気極側で3O2 + 6H2O + 12e- → 12OHの反応が起こる。

 これに対し,従来のダイレクト・メタノール型燃料電池(DMFC)では,燃料極側でCH3OH + H2O → CO2 + 6H + + 6e-,空気極側で3/2O2 + 6H+ + 6e- → 3H2Oの反応が起こっている。

 Acta社の燃料電池は,燃料極に鉄(Fe),コバルト(Co),ニッケル(Ni)を,空気極にFe,Coの触媒を使えることから,高価な白金(Pt)を不要にできる。出力密度は,ポンプやファンを使わないパッシブ型で55mW/cm2を実現したという。

 最新の成果では,電解質膜と触媒拡散層のバインダを改良することで,現状の2倍以上の出力を取り出せることを確認しているという。ただし,反応性が高いため,空気極側の湿度不足やバインダの耐久性の改善が必要としている。このほか,燃料極側に利用するNi触媒が電解質膜に混入しやすく,燃料極と空気極が短絡を起こす可能性があることから,Niが浸透しない対策を進める必要があるとしている。なお,Acta社ではエタノール以外にもエチレン・グリコールを燃料に使って発電する試作も披露していた。