図1 試作した円筒型のSOFC
図1 試作した円筒型のSOFC
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図2 発電試験結果
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 産業技術総合研究所は,+600℃以下で作動が可能な直径1mm以下の円筒型固体酸化物型燃料電池(SOFC)を開発した。従来のSOFCに比べて200℃ほど低温で発電できるため,自動車の補助電源や家庭用燃料電池,ノート・パソコンなどの携帯機器向け電源へ適用できるとしている。従来のSOFCは動作温度が+800℃程度と高いため,断熱に大きな容積が必要になるほか,Ni系合金などの高温に耐えられる部材を利用するため高コスト化し,適用分野が限られていた。直径1mm以下のSOFCの試作は初めて。

 試作したSOFCは,直径0.8mm~1.6mmで長が1cmの円筒型セル(図1)。電解質の材料にイオン伝導度の高いセリア系セラミックスを用いた。作製方法はまず燃料極としてニッケル−セリア系材料「NiO/CGO(CeGdO2)」を押し出し成形する。次に外側に電解質としてCeGdO2をスラリーコート法で塗布する。最後に空気極としてランタンコバルト−セリア系材料「LSCF(LaSrCoFeO3)」を塗布してセルを作製する。なお,今回の試作では各工程ごとに焼結を行っている。

 試作した直径1.6mmのセルを+450℃~+570℃の範囲で作動した場合,0.17W/cm2~1W/cm2の出力密度を達成している(図2)。この値は,これまでのセリア系セラミックスを用いたSOFCの電極面積当たりの出力密度としては世界最高にあるという。

 産総研では,このセルを複数集積してモジュールとして利用する開発を今後進めていく。直径0.8mmのSOFCを使った場合,1cm3当たり約100本のセルを集積でき,作動温度+500℃で7W,同550℃で15Wの出力を得ることが可能としている。これは角砂糖の大きさのスタックでノート・パソコンを十分駆動できる出力に相当する。今後の計画としては,出力密度2W/cm2以上とし,モジュールで容積1L当たり2kWの出力を実現したいとしている。

 今回開発したセルは,燃料電池として利用するだけではなく,セルに電流を流すことで,NOxを除去できる触媒としての機能を備える。そのため,2009年から規制が強化されるディーゼル車向けに展開を図りたいとしている。なお,今回の開発は,新エネルギー・産業技術総合開発機構から助成を受けたプロジェクト「セラミックリアクター開発」の成果である。