米Texas Instruments Inc.(TI社)は,W-CDMAやGSM,無線LANなど各種の無線サービスを1チップで送受信できるRFチップを開発中であることを明らかにした。中心周波数や帯域幅の異なる無線信号の送受信が可能なRFトランシーバICで,マルチモード・マルチバンド化が進む携帯電話機での利用に向ける。

 送受信する中心周波数や帯域幅を自在に切り替える無線回路のコンセプトは,「リコンフィギュラブルRF(再構成可能な無線回路)」と呼ばれている。これを使えば,場面に応じて複数方式の無線サービスを切り替えて利用する機器を一組の無線回路で実現できる。同種のICでは米BitWave Semiconductor,Inc.などベンチャー企業の取り組みが知られているが(Tech-On!の関連記事),RFチップの大手メーカーであるTI社も開発に乗り出した格好だ。

 TI社が1チップ・ケータイ実現のために開発した無線回路技術「DRP:digital radio processor」をベースにする。DRPは,RF CMOSプロセスなど特殊な製造プロセスを用いずとも,メモリやロジック同様にスタンダードのCMOSプロセスでRF回路を構成するための設計技術。例えば受信回路では,多段構成のスイッチト・キャパシタを使ってRF信号を直接標本化(ダイレクト・サンプリング)する離散時間アナログ信号処理などが用いられる。TI社はこのDRPを使い,これまでにBluetooth用ICやGSM用IC,さらにDVB-Hなどデジタル放送受信用ICを開発および販売してきた。同社はこのDRPをさらに拡張し,W-CDMA向けのRFトランシーバICを開発中であり,その次のステップとしてリコンフィギュラブル型のRFチップを開発するという。半導体プロセスには65nm世代以降のCMOS技術を用いるとみられる。3GPPの次世代規格「UTRAN LTE(universal terrestrial radio access network long term evolution)などでの利用を想定している。

(関連する特集記事を,『日経エレクトロニクス』2006年1月30日号に掲載予定です)