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 2006年1月21日,センター試験に初めて導入したICプレーヤによるリスニング試験で,ICプレーヤの誤作動が相次いだ。試験を実施した大学入試センターが把握した誤作動の総数(機器の故障が原因で再テストを認められた人数)は437件。受験者数を約50万人とすると,約0.09%が不具合を起こした計算となる。

 2005年の国内フラッシュ・メモリ型音楽プレーヤの市場は250万台ほど。これに対してリスニング試験向けICプレーヤはセンター試験だけで50万台,模擬試験向けに予備校が購入した分も含めると,さらにその台数は増加する。1台1台は安価ながら,合計すると巨大市場になるといえそうだ。だがこの市場では,通常の機器以上に「初期不良を出さないこと」が重視される。今回の機器は,この要求を満たすことができなかった。

3つの「信頼性試験」にも関わらず・・・

 同センターが,テスト中に誤動作を防ぐために採った対策は3つある。だが結果として不具合は対策をすり抜け,初期不良率約0.1%という不名誉を残すことになった。

 1つは,前年の2005年に,試作したICプレーヤで事前テストを行ったこと。学生3万5000人を対象に,本番と同じ30分間のリスニング・テストを実施した。この結果,一部報道によると18台でトラブルが発生したという。トラブルの内容は不明である。

 ただ,このときセンター側は誤作動に関する特段の対策はとっていなかったもよう。事前テストの後は,「受験生が間違えて電源をつけないよう,電源ボタンを1秒押すと起動する仕様にする」「受験生による再生テストの時間を2分から1分にする」などの細かな仕様変更を行うにとどまった。

 もう1つは,メーカーによる全数検査である。検査項目の詳細は明らかではないが,電源や再生など基本動作の確認にとどまっていたとみられる。

 最後の1つは,ICプレーヤを受験生に配布した後に,テスト音声を1分流して受験生にICプレーヤの動作を確認させたこと。この時点で判明した初期不良の件数は不明だが,不良品の一部はこの段階で交換されたとみられる。この動作確認で誤動作が判明したICプレーヤの数は,先の誤動作の件数には含まれていない。

 今回のICプレーヤは単3乾電池1本で動作する。読み込み専用のメモリースティックを機器に挿入することで,独自仕様の音声ファイルを再生できる。巻き戻しや早送りはできない。同センターはICプレーヤの製造元について「情報漏えいの恐れがある」として公開としていない。調達コストも非公開である。

 試験に使ったICプレーヤや媒体は受験生による持ち帰りが認められており,すでにインターネット上では機器の分解や音声ファイル解析の報告が相次いでいる。